共生システム理工学類長
長橋 良隆
NAGAHASHI Yoshitaka
地球温暖化や自然現象および自然改変に伴う多様な災害、生態系サービスの破壊、極地から深海や成層圏にまで及ぶ環境汚染は、1950年代以降の人間活動によって顕在化した地球規模の諸課題です。また、持続的かつ環境負荷の少ないエネルギーや物質の創出、少子・高齢社会を見据えた人支援技術の創出、変化の著しい高度デジタル社会への対応は、日本が直面する喫緊の課題です。さらに、産業活動の効率化と適切なマネジメント、利害関係者の協働による持続可能な社会の構築には、科学的であると共に人との係わりに重きをおいた包摂的な視座が求められています。
このような現在顕在化している諸課題は、複層的に折り重なり、解決を困難にしています。複層的に折り重なった課題に対して、専門的立場から科学的に解決方法を模索すると共に、人・産業・環境の相互の関わりを俯瞰的に見通し、より望ましい提案ができる人材が求められています。また、科学や技術に対する信頼は、誤りの無いデータや筋の通った論理が基本であることはもちろんですが、その根本は科学者や技術者の倫理観にあります。
共生システム理工学類は、人・産業・環境が共生する社会を構築するために必要な学問を総合的・実践的に学び、21世紀の社会が抱える諸課題の解決に貢献できる知識・技能と現場応用力を備えた理工系人材を育成することを教育目標としています。共生システム理工学類は、理学と工学、科学と技術、自然と社会をシームレスに俯瞰し、未来志向の科学・技術の倫理観を身につけ、長期的かつ持続可能な視点から、真に実現可能な解を導き出すことができる人材の育成に取り組みます。
人新世(じんしんせい)という用語は、人類が地球に対して後戻りできないほどの影響を及ぼしていることが顕著になった、1950年代以降の時代に対して提唱されました。過去から現在までの長い時間スケールを意識し、その上で未来を志向し、困難な課題にしなやかに取り組む思考力と実践力を養い、人新世の科学・技術の創成を我々と共に目指しましょう。