共生システム理工学研究科・食農科学研究科へのご入学おめでとうございます。 福島大学を代表して、大学院への入学を心よりお祝い申し上げます。
今日から皆さんを福島大学の新しい仲間として迎えることを、大変うれしく思います。
皆さんはこれから、それぞれの専門分野で研究を深めていくことになります。
研究とは何でしょうか。
まだ誰も知らない答えを見つけることも、もちろん研究です。しかし私は、それ以上に大切なのは、自分自身で「問い」を見つけることだと思っています。
私たちを取り巻く社会は、大きく変化しています。人口減少、気候変動、エネルギー問題、不安定な国際情勢、そして生成AIをはじめとするデジタル技術の急速な進展。これまで当たり前だと思っていたことが、当たり前ではなくなっています。
こうした時代だからこそ、「なぜそうなのか」「本当にそれでよいのか」と考えることが大切です。
福島大学は、「正解のない問い」に挑戦する大学です。
そして、ここ福島には、そうした問いを考えるための現場があります。
東日本大震災と原子力災害から15年余りが経ちました。復興は進んでいますが、人口減少、地域コミュニティ、産業、農業、環境、エネルギー、風評など、今なお多くの課題があります。そして、それらは決して福島だけの問題ではありません。
福島大学はこれまで、地域の皆さんとともに現場に入り、試行錯誤しながら、こうした課題に向き合ってきました。
皆さんにも、研究室の中だけで研究を完結させず、ぜひ外に出てほしいと思います。異なる分野の研究者と議論する。地域の人の話を聞く。自分とは違う考え方に触れる。そうした経験が、自分の研究をもう一度見直すきっかけになるはずです。
福島大学は今、「福島大学グランドデザイン2040」のもと、「新しい社会のあり方を提案できる大学」を目指しています。
大学院で研究する皆さんにも、その一翼を担ってほしいと思っています。
最後に、皆さんに一つの言葉を贈ります。
「自我作古(じがさっこ)」。
「我より古をなす」。前例がなければ、自らが最初の一歩を踏み出す、という意味です。
研究をしていれば、思うような結果が出ないこともあります。自分が立てた問いそのものが間違っていたと気づくこともあるでしょう。
しかし、それも研究です。
私自身、この「自我作古」という言葉を大切にしてきました。
皆さんも、これまでの常識や前例にとらわれず、自分自身の問いを持って研究に取り組んでください。そして福島大学での研究が、皆さん自身の新しい一歩につながることを期待しています。
改めて、本日はご入学、誠におめでとうございます。
令和8年10月1日
福島大学長 佐野孝治