福島大学大学院共生システム理工学研究科へのご入学おめでとうございます。福島大学を代表して、本学大学院へのご入学を心よりお祝い申し上げます。
本学は、13年前の東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所事故の経験を踏まえ、「『正解のない問い』にチャレンジできるイノベーション人材の育成」をビジョンとして掲げています。福島大学は発災直後から多くの復興支援活動を行い、これによって大学はたくさんの学び、いわゆる「復興知」を得ました。
大学院生に期待することは、地域や社会に対する課題を新しい視点で解決できる「イノベーションの担い手」となってほしいということです。イノベーションというと、傑出した天才がもたらす新機軸のことで、自分には遠く及ばない、と思われるかもしれません。
しかし、イノベーションの原点は、常識的な見方から自由になることです。個々人の研究もまた、自分自身がいかに常識にとらわれていたかに気づくところから始まります。最も重要な研究対象は"自分自身"ということに気づけば、社会の見え方も変わるはずです。
福島大学は地域の人々と共に、震災復興を歩んできました。人口が急激に減少し、コミュニティの維持が困難となり、経済や環境、エネルギー問題などが噴出した福島県は「21世紀的課題が加速した地域」といわれ、福島の課題解決は世界の課題解決ともいわれています。その解決方法は、覚えた公式から導き出せるようなものではありません。複雑に絡み合う現実と格闘し、新たに「答え」をつくり出す以外にありません。
本学では、今年4月に「共生システム理工学類附属水素エネルギー総合研究所」を設置するなど、新たな社会課題に対応できる研究施設や設備を整えています。
ぜひ、この福島大学で「正解のない問い」に挑戦することの意味を学んでいただきたいと思います。
研究に励まれ、2年後の修了時には、立派なイノベーションの担い手になっていることを期待し、歓迎の言葉といたします。
令和6年10月1日
福島大学長 三浦浩喜