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福島大学

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令和4年度(9月期) 福島大学学位記授与式 「学長送別の辞」

 本日、晴れて「学士」の学位を得た24名の学生の皆さん、「修士」の学位を得た4名、「博士」の学位を得た1名の大学院生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。新しい門出を心よりお慶(よろこ)び申しあげます。

 ここに来て、ようやく出口が見えてきた新型コロナウイルス、このコロナ禍により、卒業研究や修了研究、就職活動にサークル活動などの多くの面で、皆さんの大学生活は影響を受け続けてきました。すべてがオンライン授業となり、何か月も友達に会えない日々から2年半、無事、この日を迎えることができたことを、とても感慨深く受け止めています。

 さて、今年2月24日に始まった、ロシア軍のウクライナへの侵攻は世界に衝撃を与え、その悲惨な有様はSNSなどで、リアルタイムに世界に発信され、情勢は今も変化し続けています。21世紀に、こんな凄惨な戦争がありうるのか、冷戦終了以降築きあげてきた平和を維持する枠組みが、かくも容易に崩壊してしまうのかと、誰もが動揺したことと思います。

 この紛争は、エネルギーや食糧、経済における安全保障問題へと広がり、現在、私たちの足元をも揺るがす事態となっています。

 これらの危機は、現代社会に生きる以上、誰一人として逃れることのできない脅威です。

 世界は常に変化し続けています。それも予測不能で、複雑で、曖昧なものへ、加速度的に変わりつつあります。しかし、私たちは危機に直面したときには、ほんとうに大切なものは何か、守るべきものは何かを真剣に考えるチャンスが与えられる、ということもできます。

 今から11年前、福島は東日本大震災と原発事故により、悲劇の地として世界中に知れ渡りました。福島大学では、交通網が寸断され、大学に取り残された学生たちは、国立大学で唯一開設された第一体育館の福島大学避難所で、避難所運営にあたりました。その中には卒業式を迎えることができなかった4年生の姿もありました。

 また、多くの学生たちは避難所や仮設住宅で子どもやコミュニティの支援を行いながら、自分たち地元の学生ができることを模索し続けました。震災によって県内就職が不可能となって涙を流した学生、目の前の子どもたちを放っておいて自分だけが社会に出て行くことが考えられない、と、身を粉にしてボランティアに励む学生たち......、彼ら彼女らの姿を忘れることはできません。

 今も大震災は収束しているわけではありません。農産物や処理水の問題、コミュニティの再建など多くの問題が残っています。本学を去る今だからこそ、この原発事故の起きた福島で学んだ意味、福島大学を卒業する意味を考えて下さい。

 福島大学は地域の人々と共に、この震災復興を歩んできました。そして、これからもこの歩みは留まることはありません。福島は「21世紀的課題が加速した地域」といわれ、福島の課題解決は世界の課題解決ともいわれています。福島が抱える課題の解決策は、覚えた公式から導き出せるようなものではありません。複雑に絡み合う現実を解きほぐし、新たに「解決策」をつくり出すしかありません。

 明日から始まる新しい生活の場で、「福島大学で何を学んできたのか」と問われたとき、何が語れるのか、自分に深く問いかけてみて下さい。

 これからの皆さんが、福島大学での学びを誇りにして、ご活躍されることを祈念し、送別の辞といたします。

令和4年9月30日

福島大学長 三浦浩喜

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