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福島大学

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令和3年度(9月期) 福島大学学位記授与式 「学長送別の辞」

 本日、晴れて「学士」の学位を得た 22名 の学生の皆さん、「修士」の学位を得た 3名 、「博士」の学位を得た 2名 の大学院生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。新しい門出を心よりお慶び申しあげます。

 現在も全世界で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響により、大学生活や卒業研究や修了研究、就職活動などのあらゆることで、学士課程の卒業生は4年間の3分の1が、修士課程の修了生は4分の3の期間で、これまでとは異なる対応が求められてきました。無事、この日を迎えられたことを、皆さんとともに喜び合うとともに、加えて、この1年間半、本学のさまざまなコロナ対策にご協力をいただきましたことに、この場を借りて 深く感謝いたします。

 皆さんが入学して今日まで、社会はどれだけ変わったでしょうか。身近なところでは、携帯電話はあらゆるメディアのプレイヤーとなり、決済サービスや仮想コミュニティ、人工知能も詰め込まれるようになりました。国内では、熊本地震や北海道地震が発生し、今年2月にも福島県沖を震源とする震度6強の地震に見舞われました。温暖化の影響で50年に一度と言われた風水害が、毎年のように起こるようになりました。選挙年齢が18歳に引き下げられ、安保法案が成立したのも皆さんが在学している間でした。時代も平成から令和に変わりました。

 そして、2019年末に確認された新型コロナウイルスは、ちょうど1年前、世界の感染者の累計が3千万人に迫る状況でしたが、現在は2億3千万人が感染しており、先進国によるワクチンの独占も、新たな問題となっています。密度の濃い人間関係を求めてきたこれまでの文化のあり方、グローバル化を標榜してきた世界の未来、それらが目の前で大きく変わりました。

 皆さんはこの福島大学で学びました。ちょうど10年前、福島は東日本大震災と原発事故により、悲劇的な地域として世界に知れ渡りました。交通網が寸断され、大学に取り残された多くの学生たちは、国立大学で唯一開設された第一体育館の福島大学避難所で、避難所運営にあたりました。その中には卒業式を迎えることができなかった4年生の姿もありました。

 また、多くの学生たちは避難所や仮設住宅で子ども支援やコミュニティの支援を行いながら、自分たち地元の学生ができることを模索し続けました。震災によって就職試験が中止となって涙を流した学生、目の前の子どもたちを放っておいて自分だけが社会に出て行くことが考えられない、と、身を粉にしてボランティアに励む学生たち......、彼ら彼女らの姿を忘れることはできません。

 今も大震災は収束しているわけではありません。人々の悲しみや苦しみは今も続き、新たに生まれてさえいるのです。本学を去る今だからこそ、この福島で学んだ意味、福島大学を卒業する意味を考えて下さい。

 福島大学は地域の人々と共に、この震災復興期間を歩んできました。そして、これからもこの歩みは留まることはありません。福島は「21世紀的課題が加速した地域」といわれ、福島の課題解決は世界の課題解決ともいわれています。福島の課題の答えは、覚えた公式から導き出せるようなものではありません。複雑に絡み合う現実と格闘し、新たに「答え」をつくり出す以外にないと思います。

 この福島で「解のない問い」に挑戦することの意味を学んだとするなら、この学びを是非、多くのところで語ってください。それが、本学を卒業する皆さんへのお願いです。

これからの皆さんが、福島大学での学びを誇りにして、ご活躍されることを祈念し、送別の辞といたします。

令和3年9月30日

福島大学長 三浦浩喜

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