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福島大学

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学長・歓迎の言葉

福島大学に入学・編入学された皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。

世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスの感染リスクを最小限に留めるために、本年度は入学式の開催を自粛しました。晴れの姿を心待ちにしていた学生、保護者の皆様には残念な結果となってしまいましたが、ご了承いただきたいと思います。

福島大学は昨年創立70周年を迎え、同時に金谷川へのキャンパス移転40周年、そして、福島県民の悲願であった食農学類の新設と既存4学類の再編、そして教育改革からなる「三身一体の改革」を行って「新しい福島大学」が誕生した年でした。

とりわけ教育改革では、本学の教育理念を「問題解決を基盤とした教育」とし、「解のない問いにチャレンジできる人材」の育成を目標に掲げました。今から9年前の東日本大震災、それに伴う東京電力福島第一原子力発電所事故では、福島大学は発災直後から、避難所の開設と運営、県内外での学生ボランティア活動、県内の放射線の測定、被災地の実態調査など、多くの支援活動を行い、これによって大学はたくさんの学びを得ることができました。新しい教育理念の「問題解決を基盤とした教育」とは、震災復興に関する様々な活動で得た学びを教育課程に組み込んでいくと同時に、教科書の中に閉じ込められた体系的な知識を受け身的に学ぶだけではなく、複雑な現実社会に飛び込み、一人ひとりが自分なりのアプローチで問題を発見し、仲間とともに探究し合い、自分自身の生き方や社会のあり方を考えてもらいたいという願いがこめられています。

福島大学は、大震災と原発事故を乗り越え、直近では昨年の台風19号でも支援を行い、これらの取り組みは現在に至っています。

大学の4年間というものは、人生で最も光り輝く時代で、最も充実した、楽しい時期だと思います。その楽しい大学生活の中で、ぜひ地域の現実に触れる機会を持って下さい。皆さんの多くは4年後に社会に羽ばたくことになると思いますが、そこで出会う社会の現実はおそらく皆さんが経験してきたものと異なるものです。人口減少、少子高齢化、資源・エネルギー問題等がいっそう深刻化し、そしてこの新型コロナウイルスがどのような形で収束するかわかりませんが、経済にも大きなダメージを与え、社会全体に大きな変化をもたらすことと思います。

皆さんには、これらの課題に受け身的に適応していくのではなく、能動的なチャレンジャーとして成長してくれることを期待します。ある統計調査によると、「自分の力で社会を変えることができる」と考えている若者の割合は、多くの国が5割以上であるのに対し、日本ではわずか18%です。5人に4人は「自分ではない誰かが、何かやってくれる」と思っているのです。これではわが国は持ちこらえられません。多くの困難を乗り越えてきた福島大学に入学した皆さんには、ぜひ、「自分の力で社会を変えることができる」と確信できる人間に育ってもらいたいと真に願っています。

さて、実は私は福島大学の卒業生で、41年前、ちょうどこの金谷川キャンパスに福島大学が移転したその年に入学しました。その当時はこの金谷川駅周辺にアパートらしいアパートは一つもなく、駅からキャンパスにたどり着くまでに山を一つ越えなければなりませんでした。しかし、山を抜けて目の前に姿を現した真っ白のキャンパスは、まさに夢のような世界で、ここで思いっきり好きなことが学べると思ったとき、胸が大きく高鳴りました。

福島大学は学生の権利と自主的な活動が尊重され、大学自治の精神が今に引き継がれている大学です。ですから、教員や職員のいうとおりにやり過ごせばいいというのではなく、この金谷川キャンパスで生活する一人の市民として、福島大学の主人公として、大学生活を送っていただきたいと思います。

最後になりますが、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、授業や学生生活は不完全な形で令和2年度がスタートしました。「新型コロナウイルスさえなければ」と、多くの学生の皆さんが悔しく感じていることと思いますが、一方でこのような逆境の中でしか学べないことがあることも事実です。福島は大震災で多くのものを失いましたが、この経験によって得られた知見は計り知れません。どのような厳しい状況であっても、常に可能性を見出し、ピンチをチャンスに、逆境をバネに変えてもらいたい、そして常に自分にとってのよりよいあり方、社会にとってのよりよいあり方を追求してくれることを願っております。

皆さんが困難に打ち勝ち、このキャンパスで大きく成長してくれることを期待し、歓迎の言葉といたします。

令和2年4月8日

福島大学長 三浦 浩喜

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