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福島大学

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令和元年度(9月期) 福島大学学位記授与式 「学長送別の辞」

 本日、晴れて「学士」の学位を得た22名の学生の皆さん、「修士」の学位を得た5名、「博士」の学位を得た1名の大学院生の皆さん、「ご卒業おめでとうございます」。新しい門出を心よりお慶び申しあげます。大学卒業は、人生の一つの節目であり、「社会人」としての門出を祝い、皆さんに声援を送りたいと思います。

 この9月には、台風15号による強風で多数の電柱などが倒れ、千葉県において広範囲で大規模な停電が長期にわたり続き、甚大な被害が起こっています。被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。昨年の西日本豪雨災害、北海道大地震など日本列島の至る所で毎年のように大きい災害が発生しており、改めて、どのようにして災害への備えをすれば良いのかを考えさせられました。

 さて、東日本大震災と福島第一原発事故から8年半が経ちましたが、今なお福島県では県内外に4万2千人の住民が避難生活を余儀なくされています。この間、多くの被災地域で避難指示が解除されてきましたが、住民の帰還状況も半数を超えたところもあれば、1割にも満たない地域もあり様々です。復興はまだまだ道半ばであります。

 一方、昨年夏に7年ぶりに復活した福島県のJビレッジが2020東京オリンピックの国内聖火リレーのスタート地点に決まるなど復興の歩みのシンボルになる明るいニュースもあります。さらに、この9月20日から、アジアで初の開催となるラグビー・ワールドカップが開幕し、9月25日には、岩手県の釜石市の鵜住居復興スタジアムで、フィジー対ウルグアイの試合が行われ、東北の復興を国際的アピールする機会となり、大きな感動を呼びました。

 東日本大震災から8半が経ち、震災の「風化」が大きな課題とされてきています。福島大学は、この9月11日に附属図書館に震災・復興展示コーナー「東日本大震災 福島大学の記憶」を開設しました。開設の趣旨は、本学教職員も震災後採用された者が150名近くになっていたり、今年度新入生が当時まだ小学4年生であったことなど、東日本大震災の当時の記憶が曖昧で忘れ去られていく状況にあり、福島大学として震災の様々な記録、そして記憶を学内外に伝える責任があると考えたからです。9月11日の開所式の様子が、新聞やテレビで大きく報道され、大きな反響を呼んでいます。震災の記録を後世にきちんと伝えていくことが、私たちの使命であると考えています。

 さて、皆さんは、明日から「社会人」としての第一歩が始まります。実社会の中で仕事を持ち、日常生活を円滑に送っていく上で、他者・周りの人との関係性が極めて重要になってきます。一般的に「コミュニケーション能力が不可欠」などといわれますが、それは、単に「話がうまい」「おしゃべりが上手」というような表面的なことではなく、他者との関係性、つまり信頼関係が築けるかどうか、「心のコミュニケーションが築けること」が根っこに必要であるということです。話上手ではなく、どのように実践(実行)するか、「有言実行」「不言実行」の「実行」部分、つまり人はどのように行動するのかが、信頼関係を築く上でとても重要です。相手方・周囲は「人がどう言うか」ではなく「どう行動するか」に常に注目し、その人を信用・信頼できる人と判断しています。

 「社会人」となられる皆さんも、「有言実行」「不言実行」の「実行」に力点を置き、周りから信頼される社会人としての成長を目指して下さい。

 最後に、皆さんが社会の様々な分野で、福島大学での学びを生かして、ご活躍されることを祈念し、送別の辞といたします。

令和元年9月30日
福島大学長 中井勝己


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