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福島大学

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平成30年度 福島大学 学位記授与式 学長送別の辞

 梅の花が満開となり、暖かい春の日差しを感じる中、本日、学位記授与式を挙行できましたことを心から慶びたいと思います。

 本日、晴れて「学士」の学位を得た968名の学生の皆さん、「修士」の学位を得た93名、「教職修士(専門職)」の学位を得た16名、「博士」の学位を得た4名の大学院生の皆さん、「ご卒業おめでとうございます」。これまでの長い間、皆さんを支えてこられました保護者の皆様とともに、新しい門出を祝いたいと思います。

 皆さんにとって、大学生活の修了は、人生の一つの節目(ふしめ)ではありますが、社会へ巣立っていくという意味で、高等学校までの卒業とは大きく異なるところがあると思います。大学を卒業し「社会人」となる皆さんへ、改めてエールを送ります。

 さて、皆さんは平成という元号の最後の卒業生になられます。
 平成の時代を振り返ると、平成の始まりの年(1989年)に東西ドイツにつくられた「ベルリンの壁」が崩壊し「米ソ冷戦の終結」の年でありました。国内では、日経平均株価が4万円に近づく「バブル絶頂期」であり、その後「バブル崩壊、大手銀行、証券会社の経営破綻に繋がり、巨額の不良債権により日本経済の長期低迷が続き「失われた20年」とも言われてきました。 平成の歴史を振り返って、卒業生の皆様の心に留めてほしい2つのことお話しします。
 一つ目は、「世界平和の尊さ」であります。「米ソ冷戦体制の崩壊」が世界に平和をもたらしたかというと決してそうではありませんでした。冷戦体制の崩壊により、民族や宗教をめぐって地域間紛争が多発してきました。湾岸戦争'(平成3年)、イラク戦争(平成15年)、そして現在も続いているシリア内戦もそうです。さらに、平成13年(2001年)の「9.11アメリカ同時多発テロ」は、多くの市民がテロの犠牲になり、世界中で市民が「テロの恐怖」を感じながら日常生活を送らなければならない時代となりました。ここ数年も核弾道ミサイルの脅威や領土問題など国際紛争は収まる気配がありません。改めて、日々平穏な生活が送れるという「平和の尊さ」を心に刻んでほしいと思います。
 二つ目は「自然災害への備え」であります。平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災では、6000人を超える人命が奪われました。高速道路が横倒しになるという直下型の大地震でありました。そして16年後の平成23年3月、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故がありました。さらに熊本地震、西日本豪雨災害、北海道胆振(いぶり)東部地震と立て続けに、甚大な自然災害が続いています。突然来る自然災害への対応の難しさはありますが、何よりも人命を守る備えを心に留めてほしいと思います。

 さて、東北地方の沿岸域に甚大な被害をもたらした、東日本大震災から9年目に入り、この3月上旬には8年を振り返る多くの報道がありました。岩手、宮城の沿岸地域では、住民が町を離れ、造成された住宅地が埋まらず復興計画と住民の意向とのズレが生じていること、復興公営住宅に入居できたものの、かえって被災者の「孤立」が進んでしまったなど、8年という時間の流れが被災地に重くのしかかってきており、「心の復興」をいかにはかるかという課題があります。

 福島は、地震・津波に加えて、原発事故があり、多くの住民に避難指示が出され、今でも4万1千人の県民が県内外での避難生活を余儀なくされています。この春に、原発が立地していた大熊町で一部地域が避難解除され、町役場が帰還するという明るいニュースがあります。しかし、これまで避難解除された自治体においても、帰還できた住民は一部で、高齢世代が多く、若い世代が少ないという共通の傾向が見られ、地域・コミュニティをどのようにして再生していくのかという極めて重要な課題が横たわっています。

 このような中で、福島大学での4年間で、皆さんはどのような学びがあったでしょうか。本学では、これまで、「震災復興学」や「ふくしま未来学入門」「むらの大学」「グローバル人材育成」等という独自の授業科目を開講してきました。また、学生の自主的なボランティア活動も多数行われてきています。この4年間の学びや体験は一人ひとり異なるかも知れませんが、福島大学での学びと体験が皆さんのこれからの生き方、考え方を必ず豊かに、また、深みのあるものにしてくれると信じています。

 さて、平成から新しい元号に変わる今年、福島大学は「創立70周年」を迎えます。この4月には新しく農学群食農学類と大学院共生システム理工学研究科に環境放射能学専攻が開設され、「新生福島大学」がスタートします。この70周年を記念して、卒業生・同窓会との繋がりも今まで以上に強めていく取組を始めています。本日の学位記授与式の中で「卒業生幹事の任命」をさせていただくのもその取組の一つであります。卒業後も、大学及び恩師・学友との繋がりを大切にしていただきたく思います。

 来年夏に開催される「東京オリンピック2020」は「復興五輪」と位置づけられ、先日、国内聖火リレーのスタート地点が、福島県浜通りのJヴィレッジと決まりました。震災直後、芝生の上に鉄板が敷詰められ原発事故の収束のための前線拠点になっていたJヴィレッジが、昨年夏、7年ぶりに青い芝生のサッカー場に復活しました。「Jリーグの聖地」は「ふくしま復興のシンボル」であります。

 この5月1日に新しい元号の年が始まり、新生福島大学の元年であるとともに、卒業生の皆さんの社会人元年でもあります。

 最後に、皆さんが、社会人として様々な分野でご活躍されることを祈念しまして、送別の辞といたします。

 平成31年3月25日

福島大学長 中井勝己

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