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福島大学

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平成30年度(9月期) 福島大学 学位記授与式 学長送別の辞

 本日、晴れて「学士」の学位を得た23名の学生の皆さん、「修士」の学位を得た1名の大学院生の皆さん、「ご卒業おめでとうございます」。新しい門出を心よりお慶(よろこ)び申しあげます。大学卒業は、人生の一つの節目(ふしめ)であり、「社会人」としての門出を祝い、皆さんに声援を送りたいと思います。

 この夏は、西日本豪雨災害、巨大台風21号による関西の被害、そして北海道大地震と、立て続けに多数の死傷者を出す自然災害が起こりました。一昨年の熊本大地震もそうでしたが、日本列島の至る所で毎年のように甚大な災害が発生しており、日本はまさに「災害列島」と呼んでもよいと思います。

 東日本大震災と福島第一原発事故から7年半が経ちましたが、今なお福島県では県内外に4万4千人の住民が避難生活を余儀なくされています。この間、多くの被災地域で避難指示が解除されてきましたが、住民の帰還状況も半数を超えたところもあれば、1割にも満たない地域もあり様々です。ただ、高齢者の帰還はみられるが、若い世帯が戻っていないという共通の傾向が見られます。雇用の場、子育てや学校、買い物、医療・福祉など、日常生活を送るうえで必要なインフラがまだまだ不十分であることが大きな要因であることは確かです。

 被災地にある福島大学は、震災・原発事故直後から、様々な支援活動を継続してきました。そして同時に、本学学生に対して震災復興に関われる人材育成教育を行ってきました。具体的には、「ふくしま未来学」の科目群で、「ふくしま未来学入門」をはじめとした大災害や復興支援を学べる科目や「むらの大学」のような南相馬市と川内村の被災地域での実習科目等であります。本学の4年間の学びの中で、大震災・原発事故への関心やかかわり方は、皆さん一人一人異なるでしょうが、本学での学びや経験を今後の人生の中で是非とも活かしてほしいと思います。

 また、東日本大震災から7年半が経ち、震災の「風化」が大きな課題とされてきています。実は、この夏の西日本豪雨災害でも、このことが指摘されています。河川が氾濫して多数の死傷者と家屋の被害があった岡山県倉敷市真備町も過去100年の間に、たびたび堤防が決壊する被害に見舞われ、過去の水害の記録を留める「石碑」などがありました。しかし、時の流れの中で「石碑」の存在は忘れられ、水害からの避難行動も十分ではありませんでした。「災いは忘れたころに来る」ということわざがありますが、改めて、過去の災害の歴史を胸に刻み、未来への「防災」の意識を持たなければならないと思います。

 さて、皆さんは、10月から「社会人」としての第一歩が始まります。実社会の中で仕事を持ち、日常生活を円滑に送っていく上で「周りの人にあいさつをする」と「約束を守る」という2つの習慣を身につけてほしいと思います。

 昔、キャリア教育の講師の方が、人物評価の際に「きちんと大きな声で挨拶ができる人」が良いと話されていました。社会人として、職場や仕事上の初対面の人に対して、名刺交換をしてきちんと挨拶ができることが、信頼関係を築く上での第一歩であります。職場の知らない人に挨拶をして良いのか躊躇することもあるかも知れませんが、迷わず「気持ちよく挨拶をする習慣を身につけてほしいと思います。

 もう一つは、「約束を守る」ということです。ある経営者のお話で、様々な能力は非常に優秀だが「時間にルーズな」人がいて、その人に対して、「たとえ時間の約束であっても、約束を2,3度やぶると、まともな人は相手にしてくれなくなる」「約束した以上は、どんなことも守らねばならない。守れない可能性のある約束は、してはいけない」。そして、「約束は未来への予約だから、守れないこともあります」、しかし、決して「破ってもいい」というものではない、という話がありました。
 「あいさつ」も「約束」も、日々の生活の中で行うもので、人との信頼関係を築く最初の一歩であります。周りから信頼される、立派な社会人になってほしいと思います。

 最後に、皆さんが社会の様々な分野で、福島大学での学びをもとにご活躍されることを祈念しまして、送別の辞といたします。


平成30年9月28日

福島大学長  中井 勝己

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