メニューを飛ばして本文へ

福島大学

Menu

平成30度福島大学入学式 学長歓迎の辞

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 

 福島大学を代表して、皆さんの入学をお祝いするとともに、今日から福島大学の一員となられた皆さんを心から歓迎いたします。また、これまでお子様を支えてこられましたご両親やご家族の皆様に対しても、お子様のご入学をお慶び申し上げます。
厳しい受験勉強を頑張り、晴れて入学された皆さんは、福島大学での新しい生活に期待を膨らまされていることと思います。皆さんが一日も早く新しい環境に慣れ、充実した大学生活を送ることができるよう、教職員全員でしっかりと支援していきます。


  さて、東日本大震災と福島第一原発事故から7年が経ちました。この3月上旬には大震災を振り返る様々な報道がありました。岩手、宮城の沿岸地域では、住民が町を離れ、造成された住宅地が埋まらず復興計画と住民の意向とのズレが生じていたり、復興公営住宅に入居できたものの、かえって被災者の「孤立」が進んでしまっていたりするなどの問題があります。また、福島は、今でも5万人弱の県民が県内外での避難生活を余儀なくされ、避難解除された自治体においても、住民の帰還は思うように進まず、高齢世代が多く、若い世代が少ないという共通の傾向が見られます。7年という時間の流れが被災地に重くのしかかってきており、「心の復興」や「コミュニティの再生」をいかにはかるかという課題があります。改めて、被災された方々にお見舞い申し上げます。


  福島大学は、市内から金谷川キャンパスに移転して、来年で40年を迎えますが、当初、教育学部と経済学部の2学部でした。その後、行政社会学部ができ、14年前に共生システム理工学類ができたことで現在の4つの学類になり、来春には食農学類の開設を予定しています。1つのキャンパスにすべての学生がいることによって、教養教育や一部専門教育での他学類の学生との学び合いがあり、課外活動でも専門分野が異なる学生たちの横断的な交流を図ることができ、有意義で充実した4年間を過ごすことができます。新入生の皆さんも、是非とも、この金谷川キャンパスでの大学生活を謳歌してほしいと思います。


  福島大学は、「地域と共に歩む人材育成大学」をスローガンに、様々な地域との関わりの中での学びを重視しています。最近、大学教育においてもアクティブラーニング(能動的学習)の導入が唱われ、学生自身が主体的に参加し、仲間と深く考えながら課題を解決する力を養うものです。


  本学でも、「地域」をテーマにしたアクティブラーニングに取り組んでいますが、特に、平成25年度から、東日本大震災と福島第一原発事故後、本学は文部科学省の「地<知>の拠点事業」(COC事業)に採択され、「ふくしま未来学」という教育プログラムを実施してきました。その中で、地域実践学習「むらの大学」は、この4年間で244名の学生が受講し、学生たちが、被災地の南相馬市や川内村へ出かけ、市長・村長をはじめ、震災復興に関わる住民たちから話を聞き、自ら何ができるかを考え行動することを学ぶもので、学生の大きな成長がみられる科目です。


  現在、福島大学では、「ふくしま未来学」で培ったノウハウをもとに、これまで以上にアクティブラーニング(能動的学習)を推進するための大学教育改革を進め、「地域実践特修プログラム」を作りつつあります。それは教室での学びを基に、大学の外の現場(地域)に出かけ、「課題を見つけ」「解決の手だてを探り」「課題解決を実践する」といった教育プログラムです。


   また、国の「地方創生」政策の一環として、平成27年度には「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」(COC+事業)に採択され、福島大学が中心となって、県内の大学、自治体、企業と一緒になって、インターンシップをはじめ、若者の地方での働き、定住を進める事業に取り組んでいます。


  新入生の皆さんも「ふくしま未来学」や「インターンシップ(地方創生推進事業)」を積極的に受講していただけることを期待しています。


  さて、これから大学生活を始められる皆さんに、是非とも、実行してほしいことがあります。


  それは、「わかりやすさ」「読みやすさ」がもてはやされる出版界の風潮にあえて逆らって、大学4年間で、それぞれの専門分野で「名著」や「古典」と呼ばれる書物(本)を読んでほしいことです。長い人生の中で、じっくりと時間をかけて本を読むことに没頭できるのは、学生時代だけです。「名著」とか「古典」と呼ばれる書物は、50年、100年という時の流れで読み継がれてきたもので、時代を超え伝えられる価値のあるものです。


  「名著」や「古典」の中には、難解な文章のものも多く、読み続けることに挫折しそうになるかもしれませんが、何度も何度も読み返し、「語彙」、「文脈」や「含意(がんい)」をくみ取り、作者が言いたいことを何なのかを極め、理解して欲しいと思います。


  福島大学の卒業生で、最近「教団X」「R帝国」の話題作を出し、文壇で活躍している若手の芥川賞作家・中村文則(ふみのり)さんと話す機会がありました。その中で、彼は学生時代にロシアの文豪ドストエフスキーの「罪と罰」「悪霊」などの作品を読み通したことが、現在の小説家としてのベースになっていると語っていました。


  本学附属図書館には、約92万冊の蔵書があります。新入生の皆さんも、附属図書館に足を運び、自分が大学時代に、じっくり、しっかりと読むべき本を探し出し、「名著」を読むことを実行してほしいと思います。


結びに、福島大学での4年間の学びが実り多いものとなることを願って、歓迎の辞とします。


本日は、ご入学おめでとうございました。

平成30年4月4日    

 福島大学長  中井 勝己 

ページトップ