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福島大学

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平成29年度 福島大学 学位記授与式 学長送別の辞

梅の花が咲き春の日差しを感じる中、本日、学位記授与式を挙行できましたことを心から慶びたいと思います。
本日、晴れて「学士」の学位を得た960名の学生の皆さん、「修士」の学位を得た84名、「博士」の学位を得た3名の大学院生の皆さん、「ご卒業おめでとうございます」。これまでの長い間、皆さんを支えてこられました保護者の皆様とともに、新しい門出を祝いたいと思います。

皆さんにとって、大学生活の修了は、人生の一つの節目(ふしめ)ではありますが、社会へ巣立っていくという意味で、高等学校までの卒業とは大きく異なるところがあると思います。大学を卒業し「社会人」となる皆さんへ、改めてエールを送ります。

さて、東日本大震災と福島第一原発事故から7年が経ちました。この3月上旬には大震災を振り返る様々な報道がありました。岩手、宮城の沿岸地域では、住民が町を離れ、造成された住宅地が埋まらず復興計画と住民の意向とのズレが生じていること、復興公営住宅に入居できたものの、かえって被災者の「孤立」が進んでしまったなど、7年という時間の流れが被災地に重くのしかかってきており、「心の復興」をいかにはかるかという課題があります。改めて、被災された方々にお見舞い申し上げます。

福島は、地震・津波の被害に加えて、原発事故があり、多くの住民に避難指示が出され、今でも5万人弱の県民が県内外での避難生活を余儀なくされています。昨年の春に、一部の地域を除いて、富岡町、浪江町、川俣町、飯舘村でも避難解除が行われました。しかし、避難解除された自治体においても、住民の帰還は思うように進まず、高齢世代が多く、若い世代が少ないという共通の傾向が見られます。また、教育、医療、福祉、買い物など生活の基本となるインフラの整備は順次進みつつありますが、住民の帰還に必要な雇用の場の確保や生きがいのある生活づくりなど住民が復興を実感するうえで必要なソフト面での支援についてはこれからの感があります。特に、「コミュニティの再生」という課題が、極めて重要です。

大震災と原発事故に見舞われ、復旧と復興が続く中、福島大学での4年間で、皆さんはどのような学びがあったでしょうか。多くの学友や恩師との出会いの中で、それぞれの学問分野での学びを極め、将来の自分の進むべき道を見つけられたことと思います。

本学は、平成25年度に「地<知>の拠点整備事業」(COC 事業)に採択され「ふくしま未来学」の取組を展開してきました。その中の科目「むらの大学」ではこの4年間で244名の受講生がいましたが、南相馬市と川内村で2週間の体験実習を行い、市長・村長をはじめ被災地の多くの方々や現場から貴重な学びを体験してきました。私も、この2月に「ふくしま未来学」を受講した学生たちの成果発表を直接に聞く機会がありましたが、被災地域という現場での学びを通して学生一人一人の成長を実感でき、自らの将来の進路も真剣に考える姿を見ることもできました。

また、本学はグローバル人材の養成に力を入れてきました。国際交流センターが中心となって実施している「福島アンバサダーズプログラム」(FAP)では、海外の交流協定校の留学生たちが福島の被災地を視察し、そして本学学生たちが留学生のサポーターをし、意見交換・交流を行うという「体験型被災地学習」であり、内外から非常に高い評価を得ています。震災直後からすでに12回開催してきており、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、フランス、トルコ、中国、韓国など海外からの受け入れが181名、本学のサポーターは465名で、その中からの海外派遣が35名となっており、本学のグローバル人材の養成に大きく貢献しています。

この4年間の学びや体験は一人ひとり異なるかもしれませんが、福島大学での学びと体験が皆さんのこれからの生き方、考え方を必ず豊かに、また、深みのあるものにしてくれると信じています。

さて、この2月に冬季オリンピックが韓国のピョンチャンで開催され、多くの日本人選手の活躍がありました。その中で、非常に感動的だったのが、女子スピードスケートのチームパシュートの競技で高木姉妹らの日本チームが金メダルを取ったことです。3人の選手が交互に先頭を代わり一緒に滑る競技で、今大会のメダリストをそろえた強豪のオランダチームを相手に、小柄な日本チームが最後で逆転し優勝しました。一人一人の身体能力も重要ですが、まさに全員が力を合わせ一緒に滑りきるというチームワークでの日本の勝利でした。

 さて、皆さんは、間もなく社会人としての新しい生活がはじまりますが、新しい職場や環境においてもチームワークを大切にしてほしいと思います。以前、経済産業省が社会人として身につけてほしい能力として「社会人基礎力」を提起し、大きな三つの能力を示しましたが、その一つに「チームで働く力」があげられています。自分の意見をわかりやすく伝え、相手の意見を丁寧に聞く、意見の違いや立場の違いを理解する、自分と周囲の人々や物事の関係性を理解する、社会のルールや人との約束を守る、ストレスの発生源に対応するといった能力が、「チームで働く力」としてあげられています。
一つ一つの能力はわかりやすいのですが、その能力が自分にどれだけ身についているのかを確かめることは簡単ではありません。まさに、社会に出て、時には失敗もしながら様々な経験を積み重ねていく中で徐々に身についていく力だと思います。周囲との信頼関係を築ける立派な社会人になってほしいと思います。

 最後に、皆さんが福島大学での4年間の学びを礎(いしずえ)に、様々な分野でご活躍されることを祈念しまして、送別の辞といたします。

平成30年3月26日

福島大学長 中井勝己

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