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福島大学

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平成29年度福島大学入学式 学長歓迎の辞

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

 福島大学を代表して、皆さんの入学をお祝いするとともに、今日から福島大学の一員となられた皆さんを心から歓迎いたします。また、これまでお子様を支えてこられましたご両親やご家族の皆様に対しても、お子様のご入学をお慶び申し上げます。

  厳しい受験勉強を頑張り、晴れて入学された皆さんは、福島大学での新しい生活に期待を膨らまされていることと思います。皆さんが一日も早く新しい環境に慣れ、充実した大学生活を送ることができるよう、教職員一同しっかりと支えていきます。

  さて、東日本大震災と福島第一原発事故から6年が過ぎ、この3月には大震災を振り返るさまざまな報道がありました。岩手、宮城の沿岸地域では、かさ上げされた造成地に住宅が建ち始めた映像などが放映されていましたが、大地震と津波の脅威を思い出し、改めて、被災された方々にお見舞い申し上げます。
  また、福島県は、原発事故が加わり、今なお8万人弱の県民が県内外での避難生活を余儀なくされていますが、双葉郡を中心とした被災地では昨年の葛尾村、南相馬市小高区に続き、つい先日に富岡町、川俣町山木屋地区、飯舘村の避難解除が行われました。しかし、これまでに避難解除された地域でも、教育、医療、福祉、買い物など生活インフラが十分に整っておらず、住民の帰還ができないという大きな課題が横たわっています。

  学類に入学された新入生の皆さんの多くは、まさに小学校卒業間際に大震災を経験されました。皆さんのなかには、避難生活のなかでの中学・高校6年間を過ごされてきた方もおられることと思います。あらためて、お見舞い申し上げますとともに、厳しい環境の中で勉学に励まれ、本日、入学式を迎えられた皆さんに敬意を表します。

  福島大学では、「地域と共に歩む人材育成大学」をスローガンに、様々な地域との関わりの中での学びを重視しています。最近、大学教育においても学生自身が主体的に参加し、仲間と深く考えながら課題を解決する力を養うアクティブラーニングの導入が唱われています。
  本学でも「地域」をテーマしたアクティブラーニングに取り組んできていますが、特に、震災・原発事故後、平成25年度に採択された文部科学省「地(知)の拠点整備事業」(COC事業)では、「ふくしま未来学」という名称の授業科目の集合体を作り、原子力災害からの経験を踏まえ、地域課題を実践的に学ぶことを通して、未来を創造できる人材を育成すると同時に、地域再生に貢献することを目指しています。
  さらに、国の「地方創生」政策の一環として、平成27年度には「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」(COC+事業)に採択され、福島大学が中心となって、県内の大学、自治体、企業と一緒になって、インターンシップをはじめ若者の地方での働きや定住を進める事業に取り組んでいます。
  新入生の皆さんも「ふくしま未来学」や「地方創生推進事業」に積極的に参加していただけることを期待しています。

  さて、これから大学生活を始められる皆さんに、2つのことをお話しします。

  まず第1に、正確な情報を収集し、自ら考える力を身に付けてください。最近「フェイクニュース」(嘘の情報で作られたニュース)が大きな社会問題となっています。昨年のイギリスのEU離脱やアメリカ大統領選挙の際に、「フェイクニュース」が有権者の投票に大きな影響を与えたとされています。新聞やテレビなどの伝統的な情報源と並んで、フェイスブックやツイッターなどで個人が容易に情報発信できる時代となりました。個人が情報発信できる社会は、自由と民主主義を進めるうえでとても大切ですが、情報の受け手の個人が正確な情報を見極める能力が問われます。これまでは「紙媒体」の新聞や本などの「保存性の高い情報」は、その信頼性が問われ、誤った報道や記述は社会の批判にさらされることになっていますが、最近は情報源の信頼性が揺らぎつつあるように思えます。大学生になられた皆さんは、正確な情報を見極める力を身に着け、自ら考え抜く力を身に着けてほしいと思います。

  第2に、「現場を知る」学びを大切にしてください。本学では、グローバル人材育成の取組の一つとして、国際交流センターが中心に「福島アンバサダーズプログラム」(FAP)を実施しています。海外の交流協定校の留学生たちが福島を訪れ、被災地の「現場」を視察し、そして本学学生たちが留学生のサポートをしながら、意見交換や交流を深めるという「体験型被災地学習プログラム」で、これまで10回開催し、内外から非常に高い評価を得ています。参加した学生たちは、海外で報道されている「フクシマ」と、「普通の生活をしている福島」と帰還困難区域などで「時間が止まったままの福島」とのギャップを自分の目で見て感じとる貴重な学びとなっています。新入生の皆さんも、様々なテーマで社会への関心を高め、「現場を知る」学びを大切にしてほしいと思います。

  最後に、福島大学での4年間の学びが実り多いものとなることを祈念し、学長歓迎の辞といたします。
  本日は、ご入学おめでとうございました。

                                                        平成29年4月4日    
                                                        福島大学長  中井 勝己

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