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福島大学

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平成28年度(9月期) 福島大学 学位記授与式 学長送別の辞

本日、晴れて「学士」の学位を得た22名の学生の皆さん、「修士」・「博士」の学位を得た2名の大学院生の皆さん、「ご卒業おめでとうございます」。新しい門出を心よりお慶(よろこ)び申しあげます。大学卒業は、人生の一つの節目(ふしめ)であり、「社会人」としての門出を祝い、声援を送りたいと思います。

 東日本大震災と福島原発事故から5年半が経ちましたが、今なお福島県では県内外に9万人弱の住民が避難生活を余儀なくされています。この9月11日は5年6ヶ月にあたり、新聞等で大きく報道されました。ちょうど1年前に全町避難が解除された楢葉町でも、住民の帰還はこの1年で1割程度で、病院、学校、スーパーマーケットなどの生活インフラの整備や自宅の再建の遅れが帰還の妨げとなっています。また、働き場所や放射線への不安から、働き盛りの若い世帯の帰還が進まないのも、楢葉町に限らず、被災地域の共通の深刻な課題です。
 
 被災地にある福島大学は、震災・原発事故直後から、様々な支援活動を継続してきました。そして同時に、本学学生に対して震災復興に関われる人材育成・教育を行ってきました。具体的には、「ふくしま未来学」の科目群で、「ふくしま未来学入門」をはじめとした大災害や復興支援を学べる科目や、「むらの大学」のような被災地域での実習科目等であります。本学の4年間の学びの中で、大震災・原発事故への関心やかかわり方は、一人一人異なるでしょうが、本学での学びや経験を今後の人生の中で是非とも活かしてほしいと思います。

 さて、この8月、9月に、南米では初となるブラジル・リオデジャネイロでのオリンピック、パラリンピックが開催されました。様々な競技での日本選手の活躍があり、感動するシーンが多数見られました。男子体操団体での金メダルや女子レスリング伊調選手の4大会連続金メダルをはじめ、いずれも、試合終了間際での「大逆転劇」があり、私たちに大きな勇気と元気を与えてくれました。
その中で私が特に感銘を受けたのは、女子平泳ぎ200メートルの金メダル受賞者・金藤理恵選手です。10才代後半から天性の才能が認められていたにもかかわらず結果が出せず、一時は現役引退を考えた時期を乗り越えて、トレーニングに励み、見事、28才でオリンピックの頂点に立ちました。金藤選手自身、引退を考えたときの家族の励ましや彼女の才能を信じ指導し続けたコーチの力が大きかったと語っていました。一流の技(わざ)を磨き上げることと、最後まで「諦めない気持ち」を持ち続けることの大切さが、様々なアスリートの姿から伝わってきました。

 皆さんは、明日から「社会人」としての第一歩が始まります。実社会の中で仕事を持ち、日常生活を円滑に送っていく上でも「諦めない気持ち」がとても大切です。
 以前、産業界のトップを講師に招いた大学セミナーで、企業が大学に求める人材能力の1つに「諦めない気持ち」を持ち続けられることがあげられていました。実社会での仕事や人間関係は、なかなか思い通りに行かないことがあります。予想外の困難にぶつかり、くじけそうになることもあります。そのようなときに、自分自身にとって、どうしても「譲れない」ような「肝(きも)」となることに対して「諦めない気持ち」がどれだけ持てるかが問われてきます。
 スポーツ選手が、毎日のトレーニングの中で鍛えた身体能力や技への「確信」が、試合の劣勢の中での「諦めない気持ち」に繋がっているのだと思います。
 「社会人」となられる皆さんも、日々、精進し、周りから信頼される人間としての成長を目指してほしいと思います。
 
 最後に、皆さんが社会の様々な分野で、福島大学での学びをもとにご活躍されることを祈念しまして、送別の辞といたします。

                                                                 平成28年9月30日

                                                                福島大学長 中井勝己

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