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福島大学

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平成27年度(9月期) 福島大学 学位記授与式 学長送別の辞

本日、晴れて「学士」の学位を得た18名の学生の皆さん、「修士」の学位を得た2名の大学院生の皆さん、「ご卒業おめでとうございます」、新しい門出を心よりお慶(よろこ)び申しあげます。大学卒業は、人生の一つの節目でありますが、これまでの学校での学びの場から、「社会人」としての飛躍の時でもあります。改めてエールを送りたいと思います。

 東日本大震災と福島原発事故から4年半が経ちましたが、福島県では県内外に約10万人の住民が避難生活を余儀なくされています。この9月5日には全町避難をしていた楢葉町は町内除染が完了し、全面避難解除されました。自治体全体が避難したところでは初めての解除であり、町への帰還が始まりました。今後順次、学校、病院、スーパーマーケットなどの生活インフラが整備されていくことになるでしょうが、住民帰還の見通しはまだまだ不透明なところが多くあります。
 学士の学位を授与される皆さんは、大震災と原発事故直後に福島大学に入学された方々であり、この4年間は、まさに福島の復旧・復興とともに歩んだ4年間でありました。大震災・原発事故への関心やかかわりは、一人一人異なるでしょうが、福島大学での学びや経験を今後の人生の中で是非とも活かしてほしいと思います。

 東日本大震災後の日本国内では、ちょうど1年前に御嶽山の突然の大噴火で多数犠牲者が出るなど、箱根、桜島、阿蘇などの全国至る所で火山活動が活発になってきております。また先日の「北関東・東北大水害」でも河川の決壊などによる甚大な被害が各地で発生しています。改めて「災害大国の日本」で生活していることを自覚するとともに、災害への備えを日頃から持つことの大切さが問われる時代になってきていると言えるでしょう。

 一方、海外のヨーロッパでは、残虐なテロ活動の頻発や、昨年来からの「ギリシャの財政破綻」をめぐるEU諸国の問題、ごく最新ではシリアなどの中東紛争国からの「難民の受け入れ」が大きな問題となってきています。国際的な人道支援と各国の受け入れ能力との悩ましい課題が問われています。アジアでは、中国の経済成長の陰りや北朝鮮の軍事行動など日本の隣国での不安要素も多々あります。グローバルな政治、経済の動向からも目が離せない状況が続いています。
 これからは益々、社会生活を送っていく上でも、グローバルとローカルの両方の視野を持ちそなえることが求められていると言えるでしょう。
 
  さて、皆さんは、明日から「社会人」としての第一歩が始まります。実社会の中で仕事を持ち、日常生活を円滑に送っていく上で、他者・周りの人との関係性が極めて重要になってきます。一般的に「コミュニケーション能力が不可欠」などといわれますが、それは、単に「話がうまい」「おしゃべりが上手」というような表面的なことではなく、他者との関係性、つまり信頼関係が築けるかどうか、「心のコミュニケーションが築けること」が根っこに必要であるということです。話上手ではなく、どのように実践(実行)するか、「有言実行」「不言実行」の「実行」部分、つまり人はどのように行動するのかが、信頼関係を築く上でとても重要です。相手方・周囲は「どう言うか」ではなく「どう行動するか」に常に注目し、その人を信用・信頼できる人と判断しています。
  「社会人」となられる皆さんも、「有言実行」「不言実行」の「実行」に力点を置き、周りから信頼される社会人としての成長を目指して下さい。
 最後に、皆さんが社会のいろいろな分野において、福島大学での学びをもとにご活躍されることを祈念しまして、送別の辞といたします。

                                                    平成27年9月30日
                                                 福島大学長 中井勝己

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