TOP > 共生システム理工学研究科 > 環境放射能学専攻
福島第一原発事故による放射性物質の環境への放出は、福島県を中心とした広い地域に長期にわたる放射能被害をもたらしました。特にこの事故による放射能汚染は、日本という温帯多雨の地域で発生しており、地形も植生も異なる乾燥内陸域で発生したチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所事故とは環境中に放出された放射性物質の挙動が大きく異なっていることが、これまでの研究で明らかにされてきました。
環境放射能に関する諸課題は未解明の部分も多く、さらにその対応は数十年ないしはそれ以上という長期にわたるものです。また、世界的には約4億kW(設備容量)もの原子力発電所が稼働しており、さらに増設が進んでいます。そのため、将来の万一の不測の事態に迅速かつ適切に対応するためにも、福島第一原発事故の継続的な学術的知見の蓄積・体系化や人材育成が必須です。
このような背景から、本専攻では世界の多くの大学・研究機関と連携し、環境放射能学という学際的な学問分野に対応可能な人材の育成を目指します。
環境放射能学コース | 人工および天然放射性核種の環境中の動態を解明し、計測、モニタリング計画、制御、予測、評価などに、高度な専門知識に基づいて中長期的視点で総合的に取り組むことができ、環境防護、予測評価、環境修復、廃炉、中間貯蔵、浄化などの分野の課題解決ならびに学術的発展に貢献するとともに、その融合・深化させた知見を社会の課題解決に活用できる、実践的な力を有する研究者・専門職業人を育成します。 |
---|
環境放射能学専攻は、学士課程で、生態学、生物学、地球化学、化学、物理学、機械工学、電気工学などさまざまな学問分野を学んだ入学者を、環境放射能学という学際的な学問分野に対応可能な人材に育成します。そのために環境放射能学に関する俯瞰的知識ならびに実習を含む専門的教育を提供します。
環境放射能学専攻は環境放射能学コースの1コースですが、全学的な取り組みとしての学際性重視型と専門性重視型の2つの履修パターンを用意しています。
国際性を涵養するため、一部の科目は外国人教員による英語での授業とし、表現力や対話力、英語力の育成を目的とした討論形式の授業時間も十分に設定します。フィールドへの近接性を活かし、帰還困難区域を中心としたフィールドにおける野外実習を積極的に行います。さらに、海外機関との協力関係を生かし、福島のみならずチョルノービリ(チェルノブイリ)等の原子力災害被災地における実習を準備し、国際社会の中で科学的知見を還元できるリーダーの育成に努めます。
カリキュラムマップ(専門性重視型) カリキュラムマップ(学際性重視型) 履修モデル
※授業科目は、学生募集要項と併せて公表している各研究科(専攻)の「案内」をご覧ください。
詳細情報は「シラバス」からご覧いただけます。
「学際性重視型」では、実践力、学際性・俯瞰性に加え、多分野に応用できるスキルを身につけるために、第1~3セメスターで「プロジェクト研究Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」を履修します。「プロジェクト研究Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」は、学生と教員が特定の課題の研究プロジェクトに取り組み、計画の立案、調査の実施、結果の分析、報告書の作成・成果発表などを通して調査・研究力を養成する教育プロジェクトです。学生が自ら研究テーマを設定して取り組む「学生組織型」と教員が設定する研究テーマに取り組む「教員組織型」があり、いずれのプロジェクト研究を履修するかは「プロジェクト研究Ⅰ」の中で選択・決定します。なお、「教員組織型」で予定しているプロジェクト研究のテーマは添付ファイルを参照してください(計画は変更となる場合があります)。
【教員組織型】プロジェクト研究一覧
福島大学大学院では、地域や社会が抱える生の課題に対応するため、「分野横断型」「専門高度化」の2種類のプログラムを設定しています(4科目8単位以上)。プログラム修了者のうち、希望する学生を対象に修了証を発行します。
本専攻には「生態学」「モデリング」「計測」の3つの分野があり、それぞれの分野で専門高度化プログラムを設定します。
各プログラムの目的は下記の通りです。
「環境放射能生態学プログラム」:
放射性物質の生物への移行および影響に関する理論・技術を修得する。
「環境放射能モデリング学プログラム」:
放射性物質の動態解析に関する理論・技術を修得する。
「環境放射能計測学プログラム」:
放射性物質の測定法ならびに除去・分離のための理論・技術を修得する。
「環境放射能生態学プログラム」:
生物を介した放射性物質の移行・循環およびそれらを支配する生態系における物質循環・汚染影響に関する定量化・予測技術
「環境放射能モデリング学プログラム」:
放射性物質の動態および水・土砂等の汚染物質の担体となる物質循環の定量化・予測技術
「環境放射能計測学プログラム」:
放射性物質の計測・除去技術およびそれらの基礎となる物理化学・関連工学の理論
「環境放射能生態学プログラム」:
環境放射能学I・II、放射生態学、水圏放射生態学、動物生態学、森林放射能学
「環境放射能モデリング学プログラム」:
環境放射能学I・II、原子力災害学、陸域放射能動態学、移動現象論、放射能モデリング特論、海洋放射能動態学特論
「環境放射能計測学プログラム」:
環境放射能学I・II、核種分析学、陸域生物圏放射能学(※1)、放射能計測工学特論、放射能の分離技術(※2)
(※1受講に当たっては核種分析学を受講すること)
(※2初回に関連する基礎知識に関する小テストを行い、受講の可否を判定する)
4科目8単位以上
アレクセイ コノプリョフ
ALEXEI Konoplev
化学・放射線生物学
石庭 寛子
ISHINIWA Hiroko
動物生態学、分子生態学、放射生態学
イスマイル ラハマン
ISMAIL Rahman
環境分析化学
ヴァシル ヨシェンコ
VASYL Yoschenko
放射生態学
高田 兵衛
TAKATA Hyoe
海洋化学、化学海洋学、環境放射能
塚田 祥文
TSUKADA Hirofumi
環境放射生態学
鳥居 建男
TORII Tatsuo
放射線計測、環境放射線、大気電気
平尾 茂一
HIRAO Shigekazu
環境放射能
マキシム グシエフ
MAKSYM Gusyev
環境モデリング
脇山 義史
WAKIYAMA Yoshifumi
水文地形学
和田 敏裕
WADA Toshihiro
魚類生態学、水圏資源生態学、水圏放射生態学
環境放射能学専攻では、21世紀的諸課題の解決に向けて、環境放射能学の高度な専門性に加え、地球規模の視野と多元的な視点を持つ「共生のシステム科学」という枠組みの中で教育と研究を行い、環境放射能学を基盤に据えた新たなシステム科学の構築を志し、地域に貢献できる実践的な力を有する高度専門職業人・研究者を養成します。
令和2年度に環境放射能学専攻を修了した者は7名で、有職者等を除き、就職を希望する者3名全員が就職しています。就職先は、三菱マテリアル株式会社(製造業)、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(学術研究、専門技術サービス業)、株式会社環境総合テクノス(学術研究、専門技術サービス業)であり、専門性を生かした就職に結びついています。また、1名は大学院博士後期課程へ進学しています。
専攻
問合せ先
環境放射能学専攻
環境放射能研究所事務室TEL.024-504-2114
入試について
入試課024-548-8064