○福島大学利益相反マネジメント指針

平成18年3月20日

1.目的

国立大学法人福島大学は(以下「福島大学」という。)、自由・自治・自立の精神を尊重しながら、真理を探究し新たな知の創造を目指す教育研究の場として、開かれた大学として、充実した国際的視野をもとに社会における諸問題に関する教育研究の発展に寄与し、地域をはじめとする人類社会の福祉と持続的な発展に貢献することを理念としている。

福島大学は、地域連携による社会貢献という一つの目標に向かって、地域をはじめとする国内外の行政組織、産業界、経済界、各種団体、及び市民等と協働して取り組みながら、教育研究に基づく知的財産を積極的に社会還元する体制を整え、産官民学連携を推進している。

その手段としては、共同研究、受託研究等の実施、その成果である知的財産の活用、民間等への技術・経営相談並びに指導、及び生涯学習公開講座の開催等の知的資産の活用など多岐にわたっている。

一方、大学の中核的な責務は優れた高度な専門的知識を有する人材の養成であり、職員等が、産官民学連携等による学外組織との活動を優先させることによって学生等の教育の機会が狭められたり、学問の独自性とその探究が阻害される等、教育面で支障が生じないよう、最大限の配慮を払う必要がある。

本指針の目的は、産官民学連携活動に取り組んでいる福島大学の職員等の個人を支え守り、意欲的な職員等の能力を最大限に発揮できるような学内ルールやシステム等の環境づくりを行うとともに、法人としての福島大学の社会的信頼を確保することにある。

これらの産官民学連携の推進にあたり、不可避的に生じ得る利益相反や責務相反の問題について、福島大学及び福島大学職員等が、公正かつ効率的な実務を行って行く上で常に意識しなければならない姿勢と利益相反に関するマネジメント方法に関し、「福島大学利益相反マネジメント指針」を定め、これを内外に明示する。

なお、本指針は、平成18年4月1日から運用する。

2.定義

(1) 本指針において、利益相反を以下のように定義する。

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ア 広義の利益相反:

狭義の利益相反(イ)と責務相反(ウ)の双方を含む概念

イ 狭義の利益相反:

職員等又は大学が産官民学連携等による活動に伴って得る利益(実施料収入、兼業報酬、未公開株式等)と、教育・研究という大学における責任が衝突・相反している状態

ウ 責務相反:

職員等が主に兼業活動により企業等の外部組織に職務遂行責任を負っていて、大学における職務遂行の責任と企業等に対する職務遂行責任が両立し得ない状態

エ 個人としての利益相反:

狭義の利益相反の内、職員等個人が得る利益と職員等個人の大学における責任との相反

オ 大学(組織)としての利益相反:

狭義の利益相反の内、大学組織が得る利益と大学組織の社会的責任の相反

なお、狭義の利益相反と責務相反の異同としては、どちらも大学における責任の遂行が問題となる点は同じであるが、その要因が「企業等から得る利益」である場合には狭義の利益相反、「企業等に対して負う責任(責務)」である場合には責務相反、と区別される。本指針では、特段の表記がない場合には、広義の利益相反をいう。

(2) 「職員等」とは、次に掲げる者をいう。

ア 福島大学の役員及び職員

イ 福島大学において研究等を行うことを目的に、所定の手続を経て受入れを許可された者(福島大学共同研究取扱規則(平成12年5月16日制定)第2条第1号に規定する民間機関等の研究者を除く。)

ウ 利益相反管理専門委員会が対象者と判断した者

3.利益相反マネジメントの基本方針

福島大学の職員等は、国立大学法人福島大学職員就業規則第4章「服務」に従い、大学の使命である教育、研究及び社会貢献等の目的のために責務を全うしなければならない。さらに、同規則第35条(倫理の保持)に基づいて制定された国立大学法人福島大学役職員倫理規程に従い、関係業者等との接触等に関し遵守すべき責務が課せられている。

一方、福島大学産官民学連携・知的財産ポリシーで明示されているとおり、福島大学は、教育研究により得られた知的財産の社会への還元及び産官民学が連携することによるイノベーションの創出に積極的に取り組むなど社会貢献を奨励し、責務の一つとしている。

福島大学は、産官民学連携による社会貢献活動の推進を公正かつ効率的に行うために、職員等の利益相反を未然に防止し、万一生じた利益相反の行為や状態については解決のための措置を講じる。

福島大学の職員等は、産官民学連携による活動の推進を行う上で利益相反・責務相反を生じないように万全の注意を払うものとする。この場合、大学は、公正かつ効率的な産官民学連携による活動を行うため、法的に合法であることに加えて、福島大学の就業規則とその他の規則、ガイドライン等の諸ルールに則って妥当かどうかの判断基準を広く学内外に明示し、職員等においてはこれを遵守するという考えに基づき、学内に設置する利益相反管理専門委員会により利益相反に関するマネジメントを行う。

福島大学は、利益相反マネジメントについて、企業等の外部組織に対しても理解と協力を求め、利益相反の防止及び万一これが生じた場合の円滑かつ速やかな解決を図ることにより、産官民学連携等による社会貢献を推進するものである。

4.利益相反マネジメントの対象者及び判断基準

(1) 対象者

ア 国立大学法人福島大学職員兼業規程(平成16年4月1日制定)第6条(兼業の手続き)の許可を得て兼業活動を行う職員等。ただし、兼業許可が不要な場合であっても、報酬を個人的に受領する講演や技術指導等を行う職員等を含む。

イ 国立大学法人福島大学職員倫理規程第14条第1項(講演等に関する規制)において認められる範囲の報酬、株式保有等の経済的利益を有する職員等。

ウ 福島大学以外の企業、大学等に福島大学職員等が自らの発明を技術移転する場合の当該職員等。

エ 共同研究、受託研究及び各種研究員の受け入れにより学外者と研究交流する職員等。

オ 外部からの寄付金、設備や物品の供与を受ける場合の職員等。

カ アからオの相手方等何らかの便益を供与される者に対して、大学の施設や設備の利用を提供する職員等。

キ アからオの相手方等何らかの便益を供与される者から物品を購入する職員等。

ク その他研究活動に関し、外部から明白と思われる何らかの便益の供与を受けたり、供与が想定される職員等。

(2) 判断基準

利益相反管理専門委員会は、職員等が福島大学の職務に対して個人的な利益を優先させていると客観的に見られたり(狭義の利益相反)、個人的な利益の有無に関わらず、福島大学外の活動に時間配分を優先させていると客観的に見られたり(責務相反)という利益相反(広義の利益相反)を生じさせないために、職員等が注意すべき判断基準を定める。なお、この判断基準は、社会通念の変化、法令の改正、福島大学各種規則の改正、利益相反事例の蓄積状況や利益相反アドバイザーの指摘等により逐次変更することができるものとする。

また、弁護士等の外部専門家を利益相反アドバイザーとするとともに、利益相反管理ワーキンググループを設置し、利益相反審査及び情報管理を行うものとする。

5.利益相反マネジメントの体制(別図第1参照)

(1) 利益相反管理専門委員会の設置

ア 福島大学の利益相反マネジメントに関する重要事項を審議する機関として、利益相反管理専門委員会を設置する。

イ 利益相反管理専門委員会は、委員長、副委員長及び委員により構成される。

ウ 委員長は副学長(総務担当)、副委員長は副学長(研究・地域連携担当)とする。

エ 委員は、各学類選出の評議員(各1人)、人事課長、本学の役職員以外の者で、利益相反に関する専門的知識又は高度な実務経験若しくは学識経験を有するもの及びその他利益相反管理専門委員会が必要と認めた者とする。

オ 利益相反管理専門委員会は、利益相反マネジメントに係る基本方針に関すること、利益相反に係る判断基準に関すること、利益相反に係る自己申告及び実態調査の審査に関すること、利益相反に係る啓発活動に関すること、その他利益相反に係る重要事項に関することを審議する。

カ 職員等は、利益相反管理専門委員会の決定に不服がある場合は、学長への異議申立を行うことができるものとする。学長は必要により利益相反管理専門委員会に再度の審議をさせ、その意見又は利益相反アドバイザーをはじめとする学外の第三者の意見等を参考に最終決定を行う。この場合、職員等はこの決定に従わなければならない。

キ 委員長の招集により、原則として年1回(原則6月)開催する他、必要の都度開催する。

ク 利益相反管理専門委員会の事務は、人事課において処理する。

(2) 利益相反管理ワーキンググループの設置

ア 利益相反管理専門委員会の専門的実務機能として、利益相反管理ワーキンググループを設置する。

イ 主査は人事課長、副主査は研究・地域連携課長、委員は人事課、研究・地域連携課の職員から構成するものとする。

ウ 業務内容は、①利益相反自己申告受付、②利益相反審査案作成、③申告情報管理、④利益相反研修等の実施、⑤その他利益相反に関する事項についての実務を行う。

エ 会議は、利益相反管理専門委員会委員長又は利益相反管理ワーキンググループの主査の求めにより開催する。

(3) 利益相反アドバイザーの設置

利益相反管理ワーキンググループに対し、利益相反に関する専門的見地からのアドバイスを行うために、利益相反管理専門委員会委員長の指名により、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士その他の学識経験者からなる利益相反アドバイザーを設置する。

(4) 利益相反カウンセラーの設置

ア 職員等の利益相反問題に対する適切なカウンセリングを行うために、人事課、研究・地域連携課及び地域未来デザインセンターの各職員の中から利益相反カウンセラーを選任する。なお、利益相反カウンセラーは利益相反管理ワーキンググループの委員を兼務することができる。

イ 利益相反カウンセラーは、職員等の利益相反に関するカウンセリングを行うとともに、カウンセリング案件の重要度により、利益相反管理専門委員会、利益相反管理ワーキンググループ又は利益相反アドバイザーの指示に従い対応するものとする。

6.利益相反マネジメントの手続き(別紙様式参照)

(1) 利益相反に関する自己申告書(以下「自己申告書」という。)の提出

ア 職員等は、上記4.(1)に該当する場合には、利益相反管理専門委員会(提出先:人事課)に別途定める様式の自己申告書を年1回(原則5月)提出しなければならない。ただし、職員等が活動する中で、委員会が別に定める利益相反判断基準事例において、利益相反に該当すると思われる場合には、当該職員等は、事前に利益相反カウンセラーに相談し、当該カウンセラーが利益相反管理専門委員会に対して報告して決定された指示に従わなければならない。

イ アにおける自己申告書に記載する範囲は、当該職員等と当該職員等の配偶者及び生計を一にする扶養親族とする。

(2) 職員等の自己申告及び実態調査の実施

利益相反管理ワーキンググループは、6.(1)の職員等からの自己申告の取りまとめ及び審査案の作成を行い、年1回(原則6月)に利益相反管理専門委員会に報告する。なお、利益相反管理ワーキンググループは、利益相反管理専門委員会の指示の下、必要に応じて実態調査を行い、適宜、利益相反管理専門委員会に報告するものとする。

(3) 職員等への利益相反状況の審査結果の報告

利益相反管理専門委員会は、職員等の利益相反のリスク等に関する審査結果を利益相反管理ワーキンググループを通じて当該職員等に通知するものとする。

(4) 利益相反カウンセラーの活用

職員等は、上記(1)の自己申告書の提出時又はその他随時、利益相反カウンセラーのカウンセリングを受けることができる。

(5) 個人情報の保護

利益相反管理専門委員会は、個人情報保護の観点から、報酬、資産等に関する自己申告内容及び審査結果の公表については、関係法令及び「国立大学法人福島大学個人情報保護管理規則」等の学内関係規程等に基づき取扱うものとする。

(6) 研修の実施

新任職員研修をはじめとする各種研修会等の場において、利益相反問題に関する研修を行うものとする。

7.見直しの実施

国内外の経済情勢の変動や地域社会の変化、社会通念の変化、法令の改正、福島大学各種規則の改正、利益相反事例の蓄積状況や利益相反アドバイザーの指摘等に適切に対応するために、本利益相反マネジメント指針の見直しを適宜実施するものとする。

この指針は、平成22年4月20日から施行し、平成22年4月1日から適用する。

この指針は、平成24年8月24日から施行し、平成24年7月6日から適用する。

1 この指針は、平成29年4月1日から施行する。

2 改正後の「3.利益相反マネジメントの基本方針」は平成28年3月7日から適用し、改正後の「5.利益相反マネジメントの体制」は平成26年10月1日から適用する。

この指針は、平成31年4月1日から施行する。

この指針は、令和3年4月1日から施行する。

この指針は、令和4年4月1日から施行する。

別図第1(5.関係)

福島大学の利益相反マネジメント体制

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参考資料

福島大学利益相反管理専門委員会

利益相反の判断基準事例

○ 利益相反管理専門委員会への申告、審査及び許可の後に初めて許可される活動事例(カテゴリーA)

(a) 職員等が、株式を所有しているか、それに類似した個人的利益を有する企業に対して学生、院生若しくは大学の職員等をその営利企業がスポンサーとなっている研究に従事させる場合。

(b) 職員等若しくはその家族(配偶者及び生計を一にする扶養親族)が、コンサルティング活動、株式保有又はこれらに類似の個人的な経済的利益を有している企業に対して、その企業との研究で発明した技術を当該企業に譲渡又は契約に基づいてライセンス等をする場合。(大学が職務発明等規則で規定する職員等への実施補償金(ロイヤルティ)配分又は研究室への研究資金等の提供を受ける場合を除く。)

(c) 職員等が、本来大学組織を通して研究すべきであるのに、大学外での組織を通して研究をし、その研究の見返りとして経済的な補償を受けている場合。

(d) 職員等が、大学の管理する研究開発資金の提供者である企業の取締役又は技術顧問に就任する場合。

(e) 経済的利益を得ている企業が研究資金の提供者である場合に、その職員等若しくは当該家族(配偶者及び生計を一にする扶養親族)が、発明した技術に基づいて当該企業についての技術評価に関与する場合。

(f) 大学において指導的行動をとることが可能な職員等が、個人的に経済的利益を得ている事業に対して大学による支援活動を行う場合。

○ 利益相反管理専門委員会への申告行為は事後でも原則可能であるが、必要な場合には事前の所属長の許可手続きを必要とする活動事例(カテゴリーB)

(但し、兼業にあたる場合には、兼業承認申請等は別途必要です。)

(a) ある企業の資金提供による研究に参加している職員等が、その研究で発明又は開発を行った技術に関して、職員等がその技術を当該企業に譲渡する場合又は所有を放棄する場合。

(b) ある企業の商業的又は研究活動に従事している職員等が、その企業の執行役員、取締役、コンサルタント又は代理人のポストを引き受ける場合。

(c) 職員等が、大学によって提供されているサービスと競合するビジネスについて個人的に関与し、経済的利益を得ている場合。

(d) 職員等が、選挙、任命又は雇用により公的な機関のポストを引き受ける場合。

(e) 職員等が、公的機関に関連した専門的委員会等の組織、兼業規程に基づき兼業が許可された教育機関又は財団等における理事、講師又は代表となる場合。

(f) 職員等が、ある企業等から研究資金の提供や個人的な経済的利益を得ている場合において、自分の研究結果について発表、公式紹介又はその研究結果の知的財産権に関して専門家としてのコメントを行った場合。

○ 規則に則った許容できる活動事例(カテゴリーC)

ある行動が長年行われてきており、かつ、大学の構成員としての義務を著しく阻害しない場合には利益相反には該当しないものとする(但し、当該活動以外での個別的な利害関係があるときは除く。)。

(a) 本、小説、脚本及びこれに類似したものを大学職員等の研究分野で作成する場合。

(b) 職員等が学問的業績や著作から実施補償金を受け取る場合。

(c) 依頼された論文、他の大学での臨時講義又は短期間の連続講義若しくは短期間のセミナーやワークショップを実施する場合で、随時、謝礼金及び旅費を受け取る行為であり、恒常的でない場合。

(d) 政府機関、財団等の勉強会や委員会等から日当、旅費等の提供を受けて参加する場合。

(e) 大学の職務発明等規則に定める実施補償金配分基準に基づいて技術移転に伴う実施補償金を受け取る場合。

(f) 外部の活動のための文献及び設備を調達するために短期間の臨時の借金をする場合。

(g) 外部の機関に対して、断続的に短時間のコンサルティングを行う場合。例えば、電話、電子メール又は職員等の研究についてアドバイスを求めてきた者と研究室で情報交換すること。

(h) 著しく公共の利益に資する場合で、報酬の有無にかかわらず、専門家として、裁判官、議会又は他の公的管理機関の前で証言を行う場合。

(i) 無報酬で公共に対するサービス及び大学の他の部門に対するサービスの提供を行う場合。

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福島大学利益相反マネジメント指針

平成18年3月20日 種別なし

(令和4年4月1日施行)

体系情報
福島大学規則集/第3編
沿革情報
平成18年3月20日 種別なし
平成22年4月20日 種別なし
平成24年8月24日 種別なし
平成29年4月1日 種別なし
平成31年4月1日 種別なし
令和3年2月24日 種別なし
令和4年3月23日 種別なし