◆食農学類(仮称)の設置構想について
福島大学は、金谷川キャンパス内に「食農学類(仮称)」を設置する準備を進めることとなりました。
なお、本内容は平成28年11月時点での構想であり、今後の検討によって変更する可能性があります。
学類の概要は次のとおりです。
| ●食農学類 (仮称)の概要 |
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| 学類名称 | 食農学類(仮称) | ||
| Faculty of Agricultural and Food Sciences(仮称) | |||
| 開設予定 | 平成 31年4月(1年次) | ||
| 入学定員 | 100名 (収容定員400名)程度 | ||
| 設置場所 | 金谷川キャンパス | ||
1.食農学類(仮称)設置の目的
(1)設置の必要性
現在、農林業と農山村を取り巻く情勢は、FTAの進展やTPPへの対応、担い手の減少や高齢化の進行、地球温暖化の進行や生物多様性の減退など厳しい状況にあります。さらに、福島県をはじめとする原子力災害の被災地域においては、かつて経験したことのない深刻な問題が発生しました。一方、消費者の「食の安全・安心」や農林水産物の安定供給に対する期待が高まっています。また、高品質の国内農産物・食品に対する海外需要の拡大にとって、グローバルGAPやHACCPへの対応も課題になっています。これらの情勢に対応するため、原子力災害被災地域での新たな営農システム及び食産業クラスターの確立、新エネルギーの創造、食の安全性確保、農産物及び農産加工品の輸出振興、その担い手育成は、福島県の復旧・復興にとって必要不可欠であり、ひいては、我が国の農業の発展と食料の安定供給に寄与するものと考えています。
福島県の農業と農山村を取り巻く情勢は、担い手の減少や高齢化の進行、農産物価格の低迷、農業経営における収益性の低下、資材価格の高騰に加え、地球温暖化の進行や生物多様性の減退、地球規模の環境問題の顕在化など厳しい状況にあります。さらに、福島県をはじめとする原子力災害被災地域においては、農地・森林が放射性物質によって汚染され、作付制限や出荷制限、風評による買い控え等かつて経験したことのない深刻な問題が継続しています。
こうした社会的情勢を変革するためには、『農業の構造改革や農林水産物の高付加価値化、世界的な市場競争力強化に向けて活躍する若い担い手を育成すること』が求められており、これらを実現するため、「食農学類(仮称)」の設置に向けた準備を進めることを決定いたしました。
(2)教育研究上の目的
我が国の農学教育は、専門分野の細分化により、総合性、関連性の構築が困難な傾向にあります。東日本大震災・原発事故を経験した福島では、放射能汚染という未知の課題に直面する中で、農学の基礎分野である作物栽培学や土壌学、農業経営学等のフィールドを中心とした実学的な研究と、課題解決型の実践教育を学際的に推進する必要性があることを痛感しました。世界史に残るであろう被災地を抱える現場で、実学的な農学を再構築することが福島大学の目指す実践的農学です。
かつての農業は食管制度など政府管掌を前提とした生産中心の農業でした。しかし、現在は、生産、加工、流通、消費までをも包含したフードシステム(食料品の生産から流通・消費までの一連の領域・産業の相互関係を一つの体系として捉える概念)としての視点が重要になっています。そこで、本学類では、農学においても、「川上」の農業・農家・農村による生産を対象とした農学から、加工・流通を含む「川中」、小売・消費の「川下」や食農教育をも視野に入れたフードシステムの全体を農学の対象として捉え直し、その上で、応用科学の思想を取り入れ、新しいフードシステムのあり方を「ふくしまモデル」として提案したいと考えています。
原子力災害後、国内外の大学や研究機関が、放射能汚染の実態解明とその対処方法に関する研究を継続してきました。但し、これらの成果を踏まえて長期的な視野で教育と研究を行う組織が福島県内にないことが大きな課題となってきました。そこで、福島大学に新たな農学系教育研究組織を設置することにより、福島大学が実施してきた原子力災害に関する調査・支援活動をもとに、食の安全性や農学に関わる教育と研究を一体的・体系的に展開することが可能となります。併せて、放射性物質の所在や挙動を自然科学的な実態把握にとどめず、里山生態系や農山村共同体の視点から食料・農業・農村問題を多角的に理解し、日本特有の自然や社会に適った新しい知見を獲得しながら、持続可能な農業を展望・構築する学際的な研究を展開することが可能となります。
本学類においては、原子力災害直後の緊急時において研究機関ごとに個別に管理されてきた研究成果・情報を収集し、中長期的視野に立った研究情報を体系的に管理する機能を果たすことができます。加えて、震災直後の緊急時に形成された研究機関・研究者間のネットワークを土台に、得られた知見を社会に還元しながら、より長期的な課題に取り組む新たな研究連携体制へと発展させることが期待できます。また、原子力災害の被災地域となった福島県に国内外の農学系研究者が集い、福島大学に農学系の拠点を形成することにより、国際的に認められる研究成果を地域社会のみならず国内外に還元することが可能となります。そして、今後、世界各国で類似の災害が発生した場合、農業復興を支える教育研究組織モデルを提示していきたいと考えています。
2.食農学類(仮称)のコンセプト
本学類の教育課程は、農林業及び食品関連産業に関わる専門人材の育成を目的とした「農学専門教育」と、農業・農村の具体的な地域課題に対して学際的・主体的に探究する学習方法により、課題解決志向の専門人の人材育成を目的とした「農学実践型教育」からなります。また、「農学専門教育」は、以下のように、有機的に密接な関連をもつ4つの専門領域で編成されます。
●「食品科学領域」
地域農業の振興にとって、農作物を生鮮食品・原料として販売するだけではなく、加工などにより食の安全、おいしさ、付加価値づけを追求することが課題になっています。この学問分野を担当するのが「食品科学領域」であり、農産加工学分野を中心として醸造・発酵製品や医農連携製品などの開発手法を学びます。
●「作物・栽培学領域」
自然条件に働きかけて、いかに安全・良質な作物を生産するかという課題に関わる学門分野が「作物・栽培学領域」であり、フィールド農学の基礎と栽培技術を学びます。
●「生産環境学領域」
農業は工業製品とは異なり、農村の社会資本や山林・河川・農地等の地域資源及び自然循環を基盤としています。農業の生産基盤に関わる学問分野が「生産環境学領域」であり、持続可能な農業農村づくりや資源環境の生態、その保全技法などを学びます。
●「農業経営学領域」
上記3つの専門領域をフードシステム論的な観点から連結する学問分野が「農業経営学領域」です。主にアグリビジネスの発展に関わって、「もうかる農業経営」の経営方式や費用対効果を考慮した新しい栽培方式、付加価値型農業と食品産業との連携などについて学びます。
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「農学専門教育」 |
「農学実践型教育」 |
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3.養成する人材像
本学類は、地域農業の諸課題に対応できる、学際的な思考力と高いマネジメント能力を備えた専門人材の育成と、農業生産性の向上や農産物の高付加価値化等に関わる技術開発など高度な研究を担う教育研究システムを創設します。そのため、下記のような人材を育成すべき目標とします。
@地域の食品産業の高度化を促し、地域産業をけん引するリーダー
A農業の先端技術の開発と普及を担う専門人材
B原子力災害を克服する農業・環境整備を担う専門人材
C農村再生・地域づくりをコーディネート・けん引するリーダー
D次世代の農業経営者、生産法人や植物工場のエンジニア・マネージャー 等
本学類を設置した場合、これまでの放射能汚染問題からの復興という段階にプラスして、 @新たな農業生産モデル、A高度な産地形成を担う人材育成を行い、グローバル時代の日本の農業と食料生産を担うビジネスモデルを被災地から創造していくことが可能となります。
@新たな農業生産モデルとは、放射能汚染対策で培った安全検査態勢、食品認証モデルを組み込んだ新たな生産体系です。グローバル化が進む中では、EUの地域認証や安全基準のような認証制度(地域ブランド、グローバルGAPなど)への対応が必要不可欠であり、既存の農業技術に加えて新たな技能の習得が必要となります。
A高度な産地形成とは、付加価値型の農業の追求であり、植物プラントや産地加工工程を組み込んだ6次産業化の推進です。食品科学分野、作物・栽培学分野における技術開発、商品開発機能の発揮が求められます。また、福島県では、津波被災農地の復旧・農地除染とともに実施している大区画圃場整備や土地改良事業の進展により、大区画圃場に対応できる集落営農組織や農業生産法人の育成、農外企業の参入が目指されています。土地利用型の大規模農業経営と加工工程を組み込んだ農家群のベストミックスを産地内にいかに構築し、流通段階に組み込むかが大きな課題となります。ここでは、新たなビジネスモデルと農業経営マネジメントの方式を開発・普及していくことが重要であり、そのための人材育成を現地で恒常的に実施することが求められています。このような課題は日本の農業、食品産業、流通業共通の課題であり、この解決方策を被災地福島から発信していくことが大きなインパクトとなると考えています。
4.想定される進路・就職
卒業後の進路としては、食品関連企業、農業法人、農林水産技術職(国・自治体、農業団体等)、農業高校教員、農業・農村起業家、バイオマス関連企業、試験研究機関、IT・エレクトロニクス産業などが想定されます。
(『福島大学食農学類(仮称)基本構想』抜粋)
<内容等についてのお問い合わせ先>
福島大学農学系教育研究組織設置準備事務室
TEL:024-548-8212 FAX:024-548-3180



