○福島大学学生のためのアカデミック・ハラスメント防止に関する指針

平成23年4月4日

1.趣旨

福島大学は、学生(学類及び大学院の学生(外国人留学生含む)のほか、研究生、科目等履修生など、福島大学で教育を受けるあらゆる身分をさす)の人権を侵害し、適切な教育環境を阻害するものとして、福島大学におけるアカデミック・ハラスメントに対して厳しい姿勢で臨むことを明らかにするために、この指針を定めます。

2.定義

(1) アカデミック・ハラスメントとは、「福島大学の構成員(ここでは主として教員)が権力関係を用いて、不適切かつ不当な言動を行い、これによって相手(ここでは学生)が精神的・身体的な面も含めて、修学に関連して不利益又は損害をこうむること」をいいます。

(2) アカデミック・ハラスメントになり得る言動として、例えば、次のようなものがあります。

① 明らかにアカデミック・ハラスメントであるもの

a.年齢、性別、出身、心身の障害、疾病、容姿、性格、国籍等の個人的な属性を理由に、修学上の機会、条件、評価等で相手を差別したり又は排除したりすること。

・「○○出身者は馬鹿だ」と言う。

・嫌いなタイプの学生に対して指導を拒否したり侮辱的言辞を言ったりする。

b.私的な、若しくは一方的な要求又は拒否を、教育上の指導又は学業成績等に反映させること。

・指導を拒否する。

・正当な理由なく深夜や休日に指導を行う。

・就職や他大学進学に必要な推薦書を書かない。

c.教育上の指導又は評価、利益又は不利益の与奪等を条件として、相手に私的な若しくは一方的な働きかけを行うこと。

・「食事に付き合わないと指導しないよ」と言う。

d.相手方の意に反する要求又は圧力等を与えることにより、修学、研究又は課外活動等を行う環境を害するもの。

・プライベートな行動に付き合うことを強制する。

・虚偽の噂を流す。

・教員が本来負担すべきコンパの会費、調査協力先への手みやげ代、アルバイト代など、金銭的な負担を強いる。

② 状況によっては、アカデミック・ハラスメントとなるもの

a.学生が納得する適切な指導がないままに、過度な課題を与えること。

・演習・セミナーの時間が他の研究室と比べて異様に長い。

b.学生の評価及び指導を、合理的理由もなく、他の学生の面前で行うこと。

・ささいなミスを大声で感情的に叱責する。

3.本学の責任

(1) 学長は、アカデミック・ハラスメントのない教育環境を形成し維持する責任を負います。

(2) 福島大学の全構成員は、アカデミック・ハラスメントの発生を未然に防止し、これを根絶し、被害が生じないようにするよう努力することを求められます。

4.アカデミック・ハラスメントを行わないために職員(教員及び事務系職員)が認識すべき事項

(1) 基本的な心構え

アカデミック・ハラスメントをしないようにするために、職員は学生と接するに当たり次の事項の重要性について十分認識しなければなりません。

① 被教育者である学生の人格を尊重すること。

② お互いが大切な大学構成員であるという意識を持つこと。

③ 相手を劣った存在として見る意識をなくすこと。

(2) 留意すべき事項

職員は、アカデミック・ハラスメントに関する次の事項について十分認識しなければなりません。

① 言動に対する受け止め方には個人間やその人の立場等により差があり、アカデミック・ハラスメントに当たるか否かについては、相手の判断が重要であること。

具体的には、次の点について注意する必要があります。

a.親しさを表すつもりの言動であったとしても、本人の意図とは関係なく相手を不快にさせてしまう場合があること。

b.不快に感じるか否かには個人差があること。

c.この程度のことは相手も許容するだろうという勝手な憶測をしてはならないこと。

d.相手との良好な人間関係ができていると勝手な思い込みをしてはならないこと。

② 学生が拒否し、又は嫌がっていることが分かった場合には、同じ言動を決して繰り返さないこと。

③ 相手からいつも意思表示があるとは限らないこと。

学生は、指導教員等との人間関係を考えると、明確な意思表示ができない場合もあります。一方的に学生と良好な関係が築けていると思い込むのではなく、学生から意思表示のしやすい関係作りに努力しなければなりません。

④ 大学構内におけるアカデミック・ハラスメントにだけ注意するのでは不十分であること。

例えば、指導・教育の人間関係がそのまま持続する歓迎会、ゼミナールの酒席等の場において、職員が学生にアカデミック・ハラスメントを行うことについても同様に注意しなければなりません。

⑤ 自分の言動に対して説明責任を持つこと。

学生とのよりよい指導・教育環境を築くためには、学生とのコミュニケーションが最も大切です。相手が不快と感じる言動であっても、その言動が適切な教育・指導上のものであるならそのことが説明でき、お互いを理解し、尊重し合える教育・指導環境作りを心がける必要があります。

⑥ 悪質な場合は、懲戒処分に付される場合があること。

アカデミック・ハラスメントの態様等によっては本学就業規則に規定する信用失墜行為等に該当して、懲戒処分に付されることがあります。

5.修学上の適正な環境を確保するために全構成員が認識すべき事項

修学上の環境は、職員、学生及び関係者の協力の下に形成される部分が大きいことから、アカデミック・ハラスメントにより修学上の環境が害されることを防ぐため、職員及び学生は、次の事項について常に意識するように努めなければなりません。

① アカデミック・ハラスメントについて問題提起をする職員、学生及び関係者をいわゆるトラブルメーカーと見たり、アカデミック・ハラスメントに関する問題を当事者間の個人的な問題として片づけたりしないこと。

ミーティングを活用することなどにより解決することができる問題については、問題提起を契機として、修学上の適正な環境の確保のために皆で取り組むことを日頃から心がけることが必要です。

② アカデミック・ハラスメントの加害者や被害者を出さないようにするために、周囲に対する気配りをし、必要な行動をとること。

具体的には、職員は次の事項について十分留意して必要な行動をとる必要があります。

イ.アカデミック・ハラスメントが見受けられる場合は、注意を促すこと。

アカデミック・ハラスメントを契機として、修学上の環境に重大な悪影響が生じたりしないうちに、機会をとらえて注意を促すなどの対応をとることが必要です。

ロ.学生が被害を受けていることを見聞きした場合には、声をかけて相談に乗ること。

被害者は「恥ずかしい」、「トラブルメーカーとのレッテルを貼られたくない」、「仕返しが怖い」などの考えから、相談をためらうことがあります。被害を深刻にしないように、気が付いたことがあれば、声をかけて気軽に相談に乗ることが大切です。

6.問題が生じた場合において認識すべき事項

アカデミック・ハラスメントを受けた場合、あるいはアカデミック・ハラスメントを受けているのを見た、知った場合には、その被害を深刻にしないために、学生は次の事項について認識しておくことが望まれます。

(1) 基本的な心構え

① 我慢していたのでは、問題は解決しないこと。

アカデミック・ハラスメントを無視したり、一人で我慢しているだけでは、状況は改善されないということをまず認識することが大切です。

② アカデミック・ハラスメントに対抗する行動をためらわないこと。

「トラブルメーカーというレッテルを貼られたくない」、「恥ずかしい」などと考えがちですが、被害を深刻なものにしない、他に被害者をつくらない、さらにはアカデミック・ハラスメントをなくすことは自分だけの問題ではなく修学上の適正な環境の形成に重要であるとの考えに立って、勇気を出して行動することが大切です。

(2) アカデミック・ハラスメントの被害を受けたと思うときに望まれる対応

学生はアカデミック・ハラスメントを受けたと思った場合、次のような行動をとるよう努めることが望まれます。

① 嫌だと思ったら、相手に対して明確に意思表示をすること。

アカデミック・ハラスメントと思われる行為に対して、はっきりと自分の拒絶の意思を相手に伝えることが重要です。しかし、直接相手に言いにくい場合が考えられ、そうした場合には手紙・電子メール等の手段をとるという方法もあります。ただし、相手に意思表示できなかった場合でも自分を責めずに、誰かに相談するようにしましょう。

② 信頼できる人に相談すること。

まず、友人等身近な信頼できる人に相談することが大切です。そこで解決することが困難な場合には、(4)に示す相談窓口に相談する方法を考えます。なお、相談するに当たっては、アカデミック・ハラスメントが発生した日時・内容等について記録したり、第三者の証言を得たりしておくことが望まれます。

直接相談窓口に行きにくい場合は、親しくしている友人などに一緒に行ってもらいましょう。または、演習の指導教員やクラスのアドバイザー教員・助言教員、各学類の学生生活委員(学生委員)、サークルの顧問教員などを通じて、相談窓口に相談してください。

(3) 学生がアカデミック・ハラスメントの被害を受けているのを見た、知った場合の対応

① 相談窓口へ相談に行くよう勧めること。

まずは、(4)に示す相談窓口へ相談に行くよう、勧めてください。もし、当人がひとりでは行けないときは、一緒に行くことを考えましょう。

② 代わりに相談窓口に行くこと。

ハラスメントを受けている学生がどうしても相談窓口へ行くことができない場合は、本人の同意を得て、代わりに相談窓口で相談することができます。相談窓口では、相談者のプライバシーは必ず守ります。

③ 学生に対するアカデミック・ハラスメント行為を職員が見た、知った場合には、被害を最小限にとどめるよう努力すること。

相手方の職員に対して、当該行為がアカデミック・ハラスメントに当たるとして、やめるように注意しましょう。同時に、相手方の所属する部局長等に知らせることで、被害を最小限にとどめるようにしましょう。

(4) アカデミック・ハラスメントの被害に関する相談体制

① 相談窓口

学生総合相談室及びハラスメント相談員

② 相談方法

相談は、原則として個人面談で行いますが、受付けは手紙、電話、ファックス、電子メールなどでも可能です。

7.アカデミック・ハラスメントが起きた場合の問題の解決方法

(1) 相談窓口の基本任務

① 相談窓口では、相談者の悩みを親身に聞いて、相談者の受けた行為がアカデミック・ハラスメントに当たるかどうかについて理解することを助けるとともに、相談者の心のケアを最優先に、問題を解決するために必要な手続きを行います。

② 相談に当たっては、相談者及び相手方とされた者の名誉やプライバシーに十分配慮します。

(2) 迅速な措置

ハラスメント・ゼロ対策室(以下「対策室」という。)は、当該学生からアカデミック・ハラスメントであるとの申立があり、必要と判断した場合、当該学生の同意を得て、下記のような教育上の措置を迅速に取るよう、学生の所属する部局長に依頼します。関係部局長は、相談者及び相手方とされた者等から事情を聞き取った上で、どのような措置を取るか、相談者の意思を最優先に考慮して決定し、対策室に報告します。

例えば、次のような措置があります。

① 相手方とされた者の所属する部局長が、当該行為がアカデミック・ハラスメントに当たる可能性があるとして、その行為を直ちにやめるよう相手方とされた者に対して注意・警告します。

② 事実関係に基づき、関係部局長が相談者及び相手方とされた者に対して、修学環境の修復案を提示し、それぞれが合意するという形で和解します。修復のために必要な措置は、関係部局長が責任をもって行います。

③ 関係部局長が必要と認めた場合は、指導教員の交代、指導停止等、修学環境の改善に向けて迅速に対応します。

また、大学は、相手方とされた者が相談者に対して報復することを厳しく禁じます。

(3) 対策室の対応

相談者から申立があった場合、福島大学は、「福島大学ハラスメントの防止に関する規則」に基づく対策室のもとに、事実関係を調査するための調査チームを設置し、当該学生が求めている手続きに沿って通知、調整、調停又は調査をしなければならないものとします。

・通知:申立があったことを被申立人に通知し、問題解決を図る手続き。

・調整:当事者双方の主張を公平な立場で調整し、問題解決を図る手続き。

・調停:当事者同士の話し合い、又は調停案の提示により問題解決を図る手続き。

・調査:事実関係の公正な調査に基づき、厳正な措置を求める手続き。

学生が調査を申し立てた場合、又は通知、調整、調停によって問題解決できない場合、対策室の「調査チーム」は被害を訴えた学生及び被害を与えたとされる者双方並びに関係する第三者から事情を聴取し、対策室に調査結果を報告します。対策室は調査チームの報告により、アカデミック・ハラスメントであるか否かの認定を行います。

(4) 相手方への措置

対策室において、当該行為がアカデミック・ハラスメントに当たると認定した場合は、福島大学は相手方に対して、次のような措置を講じます。

① 対策室は学長及び関係部局長に対し、確認された事実を報告し、関係部局長が必要な改善措置を講じます。学長は、その加害の程度によっては、「国立大学法人福島大学職員懲戒規程」に基づく処分を行います。

② 再発防止のため、必要な環境改善の措置、相手方職員への研修等を行います。

8.アカデミック・ハラスメント防止のための施策

福島大学は、アカデミック・ハラスメント防止のため、次のような施策を行います。

(1) パンフレットの配付や、ポスターの掲示等による啓発活動を行います。

(2) 職員及び学生に対し、必要な研修等を行います。

9.見直し・改定

本指針は、運用の状況をみて必要が生じた場合は柔軟に見直し、改定を行うものとします。

この指針は、平成27年4月24日から施行し、平成27年4月1日から適用する。

この指針は、平成28年3月4日から施行し、平成28年4月1日から適用する。

福島大学学生のためのアカデミック・ハラスメント防止に関する指針

平成23年4月4日 種別なし

(平成28年3月4日施行)

体系情報
福島大学規則集/第2編 事/第2章 その他
沿革情報
平成23年4月4日 種別なし
平成27年4月24日 種別なし
平成28年4月1日 種別なし