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「国立大学法人福島大学と独立行政法人日本原子力研究開発機構との連携協力に関する協定書」の締結について

平成23年7月25日

本学と日本原子力研究開発機構との連携協定について

福島大学長 入戸野 修

本学は、7月20日に日本原子力研究開発機構と連携協定を締結しました。これは、以下のような目的と考え方に基づいて行ったものです。

この度の東日本大震災とそれによって引き起こされた東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染で、福島県は国際的に知れ渡るところになりました。今「Fukushima」の住民は、こうした困難を乗り越えて被災地を復旧・復興させようと頑張っています。福島大学は、災害直後から数々の支援活動を展開するとともに、現時点で起こっている事実の科学的な調査・研究を実施し、それらの調査情報に基づき被災地の将来的推移を見通し、地元福島県の復旧・復興を長期に渡り継続して取り組む所存です。

とりわけ本学は放射能汚染に対して、地元大学として総力を挙げて当初より環境解析(計測・分析・評価)および自治体支援活動を実施して参りました。しかし、除染なくして復興はあり得ません。現在、安全性をより確保するために、大学構内の除染処理を実験的に実施しておりますが、大学構内はじめ福島県域を一刻も早く安全な環境に修復するには、原子力に関する専門家の協力を得て、放射能の除染・除去の効率的な技術開発を行うことが喫緊の課題になっています。

本学は福島県内唯一の国立大学として地域の環境回復・復旧・復興に向けて大きな責任を負っていると認識しております。しかしながら、本学には放射能・原子力問題に関する専門家が一人もいないというのが現状です。

日本原子力研究開発機構は独立行政法人であり、国家政策のもとで原子力の利用促進を図ってきたのは事実ではありますが、国家的危機ともいえる今回のような大事故が起こった中で、環境回復に向けて大きな責任を負ったということも事実です。原発事故後から、本学附属学校園の汚染表土の除去処理技術の開発、プール水からの放射性物質の除去技術の実験など、環境回復に向けた協力のほか、福島県内の幼稚園・小・中学校の園児・児童・生徒の保護者の方並びに先生方を対象に「放射線に関するご質問に答える会」を開催し、環境モニタリングや環境修復に向けた積極的な支援活動を展開しております。

また、今回の事故で悲惨な状況を強いられている飯舘村においても、日本原子力研究開発機構に対し土壌除染アドバイザーを委嘱しました。伊達市においても同様に協力を仰ぎ、市内小学校のプール水の除染に成果を挙げています。福島県も、放射線防護や放射性廃棄物処理の専門家を「除染アドバイザー」に委嘱しており、メンバーの中に日本原子力研究開発機構も含まれています。

本学の協定は原発促進に与するものではありません。日本原子力研究開発機構の技術や知識を福島県の環境回復・復旧・復興に向けて活用することを主眼に置いたものであり、具体的には下記事項を主体としていきます。

@放射能汚染、被ばくに関する知識の普及・啓発活動

A空間線量率の常時モニタリングによる情報提供およびその変化に関する環境解析結果の提供

B放射能汚染による生態系の変化に関する調査研究

C確かな科学・技術による放射性物質の除去・除染

D環境修復、除去・除染の科学・技術の継続的発展のための人材育成

この連携協定を締結することで、双方の研究資源を連携活用して、教育研究機関としての福島大学の研究及び人材育成のより一層の充実が図られるばかりでなく、我が国における学術及び科学技術の進展並びに福島県の復興に寄与することが期待されます。また、この協定締結により本学の学生に対する放射線教育の充実等も図れるものと期待しております。本学としては、これらの連携協定を活かして復旧・復興や災害に強い地域づくりを進める世界の災害科学の拠点にしたいと考えております。

こうした取り組みは、地域の皆様のご理解とご協力があって達成されるものです。今後も様々な福島県の復旧・復興の支援を展開して参りますので、皆様のご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

【概要】

国立大学法人福島大学(福島大学)と独立行政法人日本原子力研究開発機構(原子力機構)は、平成23年7月20日付で連携協力に関する協定書を締結しました。

本協定書の締結により、双方の人的資源、研究資源を活用し、研究及び人材育成のより一層の充実を図り、学術及び科学技術の発展、振興により地域に貢献することが期待されます。とりわけ、原子力災害に関する環境復元、災害復興に関して貢献します。

連携協力締結式の様子

【協定締結の背景】

福島大学は、このたびの震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の事故に対し、地元大学として総力を挙げて環境解析、自治体支援を行ってきました。しかし、原子力に関する専門家がおらず、とりわけ一刻も早く回復しなければならない放射能汚染に対して、除染・除去、復元の科学的成果を有しておりません。このため、世界の英知を集めて放射能汚染から一刻も早く脱却することを目指して、福島大学は原子力に関する総合的研究機関である原子力機構と連携することにしました。

一方、原子力機構は、福島第一原発の事故収束、サイト外の環境モニタリングや環境修復へ向けた支援活動として、従来より専門家の派遣、資機材の提供、解析評価や試料分析、学校等の調査及び除染の実証等、継続して様々な取り組みを実施しています。

このたび、地元の事情に精通し、信任の厚い福島大学との協力により、特にサイト外の環境モニタリングや環境修復へ向けた支援活動において、地元の実情に即し、より適切に実施することが可能となると考え、新たに福島大学と連携協定を結ぶことにしました。

【今後期待できる成果】

福島大学及び原子力機構は、それぞれ福島第一原発の事故に対する復旧・復興への支援に積極的に取り組んでいます。既に、附属中学校・幼稚園での土壌の放射線遮蔽効果調査等の研究事業を協力して展開しています。本協定の締結によって、研究協力、人材の交流、双方が保有する研究施設・設備の共同利用等が可能となり、それぞれの専門性を生かし、地域の特徴にも配慮しつつ、より一層有機的かつ効果的な研究事業等を展開することにより、我が国の環境修復戦略策定に大きく貢献することが期待されます。さらに、海外が注目する環境修復等に係る情報発信や我が国の環境修復等に係る科学・技術の継続的発展のための人材育成にも繋がるものと期待されます。

このため、福島大学と原子力機構は、福島大学校内に研究事業を実施する研究室を設置することを検討しています。

これらの成果は、必ずや地元の皆様方のご要望に応えるものと確信します。

【協定書の概要】

締結日:
 平成23年7月20日
施行日:
 平成23年7月20日
締結者:
 国立大学法人福島大学 学長 入戸野 修
 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構 理事長 鈴木 篤之
主な協力内容:
 @ 双方が保有する研究施設・設備の共同利用等
 
 A 共同研究等の研究協力
 
 B 人材の交流
 
 C 人材の育成

以上