■ 学長メッセージ(保護者の皆様へ) −新入生を迎える会(入学式)開催および授業開始にあたって−

平成23年5月2日

福島大学長 入戸野 修


 福島県吾妻連峰の吾妻小富士に雪うさぎが現れ、東北にも遅い春が訪れました。この度の東日本大震災で被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。

 既に本学のホームページでお知らせしましたように、福島大学は、5月9日に「新入生を迎える会」を開催し、5月12日から正規の授業を開始することにしました。この判断にあたりましては、皆様の大切なお子様を預かる立場からいろいろと慎重に議論して決定いたしました。

 保護者の皆様に対しまして、このように判断した理由と今後の安全対策について説明させていただき、皆様のご理解をいただきたいと願っております。

「復旧状況」

 本学では3月11日、マグニチュード9.0の超巨大地震により、震度5強の大きな揺れを受けました。学生の安否確認を最優先に行い、3月23日には学生・教職員全員の無事を確認できました。大学の建物等には大きな損傷はありませんでしたが、図書館や研究室では多くの書籍が落下しました。またライフラインについては、停電しなかったものの1週間程断水が続きました。現在では、福島市全域でライフライン、交通手段も確保され、大学の講義室、図書館、大学生協の機能も支障なく復旧し、震災前と同じ日常生活が送れるようになっています。

「放射能汚染の状況」

 福島県は、大変不幸なことに震災に伴う原発事故で放射能汚染に直面しています。原発事故の状況は、収束に向けた努力がされているものの、冷温停止状態までには、まだ予断を許さない状況が続くものと考えられます。本学では、事故直後から構内の放射線量を計測し、福島市内での計測結果を参照して、その結果を公表しております。大学構内に飛散した放射能物質は、地震後に起こった水素爆発等により飛散し降下したものであり、分析した放射能物質の核種から年間被曝線量を予測しております。その結果、平成23年5月1日から平成24年4月30日(裸で24時間1年間滞在を仮定)までの推定外部被曝線量は、高い数値のサッカー・ラグビー場で15mSv/年、 L4教室内では0.79mSv/年となっております。しかし、実際の日常生活の様式を考慮した推定外部被曝線量は、8.1mSv/年となります(注1・2)。

「今後の対応」

 現在、福島市内の放射線量は事故当初より大きく減少しており健康被害を起こすようなレベルではありません。しかし、放射線量は少ないほど望ましいことは言うまでもありません。そのためには、被曝を低減するための処置、例えばマスク装着など、日常生活での対応や注意すべき事項等について、マニュアルを作成して全学生に配布することにしております。

 また当面の間、福島大学危機対策本部を継続して設置し、緊急時に迅速に対応できるよう、@原発事故の状況および放射線量に関する情報収集に努める、A大学構内での放射線量のモニタリングを実施する、B希望者へのスクリーニングを実施する体制を整える、C地震(余震)に対する避難マニュアルを更新する、等によって安全な学習環境の確保に努めます。同時に心身のストレスに対する心のケアにも十分配慮して取り組んで参ります。災害時の心のケアには、普通の生活を送ることを基本として、友人、教職員、家族などの人間関係が重要であると言われております。ご家族皆様のご支援をよろしくお願いいたします。

 本学では、授業開始にあたって、学生の安全・安心を確保するための最大限の措置をとるように努めて参ります。放射能汚染の現状とそれに対する大学の対応について、なおご不安やご不満を感じる方もいらっしゃると存じますが、何卒ご理解を賜りますようお願いいたします。

 なお、この度の被災により経済的理由で学業が続けられない場合などがございましたら、本学ホームページにも掲示しておりますが、福島大学震災義援金や各種の経済的支援体制を用意しておりますので、担当部署にご相談ください。

(注1) サッカー・ラグビー場で8時間、学内教室2時間、アパート14時間と仮定し、かつ福島市内の年間被曝線量13mSv/年と仮定(屋内は60%の遮蔽と仮定)
→(15x(8/24h)+0.79x(2/24h)+13x0.4x(14/24h))=8.1mSv/年
(注2) 様々な見解があるところですが、国際放射線防護委員会(ICRP2007年勧告 緊急時20〜100mSv/年、収束後1〜20mSv/年)の基準を基に文部科学省から平成23年4月19日付けで通知のあった「福島県内の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について(通知)」における暫定的目安は年間20mSv(1時間当たり3.8μSv)です。